【福岡カフェ】オーストラリアからオランダ、そして春日原へ。コーヒーと人に導かれたある男性の話—
福岡に住みながら、世界70カ国以上で発行されるコーヒーカルチャー誌の日本語版ディレクターを務める室本寿和さん。海外のカフェシーンにも触れてきた室本さんが、どうやら新たなアクションを起こしたそうです。
「店に行けば、誰かに会える。
僕が思う良いコーヒー屋の定義は、
“お客さん同士が話す店”なんです」
雑誌『STANDART JAPAN』はスロバキアで’15年に創刊し、’17年には日本語版が誕生したインディペンデントなコーヒー・カルチャー誌。世界中で発行されているのこの媒体はフルリモート体制で制作されており、日本語版ディレクターの室本寿和さんは福岡の春日原を拠点にしている。
「高校を卒業してからオーストラリアに留学しました。帰国後は博多にある企業に勤めていたんですが、今度は転勤でオランダに渡り、行きつけのカフェで目にしたのが『STANDART』だったんです。店の紹介をする雑誌はたくさんあるけど、『STANDART』は、“コーヒーを通して世界を見る”がテーマ。そこに惹かれて、日本版ができると知った時には、とにかく何か関わらせてもらいたいという熱意をメールして。それから雑誌の翻訳業務を経てディレクターになりました。子どもが産まれたタイミングで『もっと土地に根を張って愛着を持ちたい』という気持ちが高まって、地元の福岡に帰郷したんです」。
その後、室本さんは’07年にオーストラリアの洋梨農園で季節労働をしていた時に出会った同い年の友人・榎原圭太さんと、約2年後に清川の『ハニー珈琲』で偶然再会。
「コーヒーラバーから雑誌を作る人になったけど、机の上でパチパチやってるだけ。現場におらんやん」と思っていた室本さんは、「逆(店)からの風景を見たい」と、榎原さんが営む千早の『バスキングコーヒー』で働き始める。そして、かつて抱いていた「コーヒー屋をやりたい」という想いを榎原さんに伝え、福岡2店舗目の『バスキングコーヒー』として’21年4月に春日原駅そばで実現させた。
「海外での生活でカフェに行くのは日常的なことでした。その目的は人。店に行けば誰かに会える。極端な話、僕の場合はコーヒーが美味しいから店に行くわけではないんですよ。僕の良いコーヒー屋の定義は、お客さん同士が話す店。千早のバスキングもそうでした」という言葉の通り、ココは客同士の距離感が近そうに感じられる。
「初日からずっとコーヒーを淹れっぱなしで、雑誌業や家庭との両立は大変だけど今は幸福感に包まれています。やっぱりコーヒー屋いいなって。ジャンルが多彩で、スペシャルティコーヒーを日常的に飲む人が増えました。ただ、街中はカフェが増えたけど、郊外はまだ少ない。僕の願望ですけど、地域の人が気軽に来られる店が郊外にもっと増えたらいいですね」と、エリアを問わず、より身近にカフェを感じられるような環境に期待している様子。
その中の一つとして、室本さんの『バスキングコーヒー春日原』は近隣の人々にとって新たなコミュニティと今後なっていくはず。
BASKING COFFEE kasugabaru(バスキングコーヒー カスガバル)
住所:大野城市錦町2-1-18
TEL:なし
営業時間:11:00~19:00
休:木曜
席:7席
P:なし
カード/可