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シティ情報ふくおか初のウェブ小説連載 三崎亜記氏作「博多さっぱそうらん記」第十四話

博と共に、博多リバレインの裏手の、鏡天満宮に向けて駆け出す。だが、百メートルも進めなかった。雷が、行く手を阻むように間近に落下する。危なっかしくて、とてもじゃないが前に進めない。
「カタハネとハンの者たちのごと、狙い撃ちされとるよ!」
這々の体で、櫛田神社に舞い戻った。さすがの雷神も、自分が祀られている神社に雷攻撃はしないようだ。
「どげんかして、鏡天満宮まで行かんと!」
「でも、一歩も近づかせない勢いで、雷が落ちてくるぞ」
それこそが、鏡天満宮の「鏡」が雷神の弱点である証だろう。
いったいどうやって近づけばいいのだろう? 焦っていると何も思い浮かばない。かなめは無い知恵を絞って、神社の境内をうろうろと歩き回った。
「う~ん、姿ば隠して近づく方法はなかかねぇ……」
「姿を隠して……。かなめ、それだ!」
「えっ、それって……、どれ?」
平らな一枚岩が池の上に渡されていて、かなめはその上に立っていた。博は、その岩を指さしていた。
「鏡天満宮と違う方向に向かえば、雷も降って来ないだろう」
「でも……、あさっての方向に向かったっちゃ、鏡天満宮には近づけんやないね」
「かなめが今立っている一枚岩は、昔、博多の街にあった、博多大水道を塞ぐための石蓋だったんだ」
「博多大水道? なんねそれ?」
「中世の頃にはあったって言われている、博多の街を東西に貫く掘割の跡だ。明治の頃には蓋がされて暗渠になっていたんだ。その蓋の名残が、今かなめが乗っている石なんだよ」
「ばってん……、そげな暗渠やら、今の時代まで残ってるわけなかろうもん。地下鉄とか下水道工事で埋められとるっちゃない?」
だが、博には何か考えがあるようだ。
「マイヅル様、さっき冷泉公園でやったみたいに、傘鉾の周囲だけを、明治の頃に戻すことはできるんだろう?」
「そりゃあ、できるばってん……」
マイヅル様の傘鉾を借りて、周囲だけを明治の頃に戻し、昔の暗渠の中を隠れ進む作戦のようだ。
「博君、博多大水道って、どこば流れとったと?」
「片方の出口は、御笠川の、西門橋の少し上流のあたりだな」
「羽片世界」での飾り山恵比寿巡行で、飾り山が足止めを食らった場所だった。
「それで……、もう一つの出口は?」
そう尋ねると、博はかなめを見つめ、にやりと笑った。
「博多リバレインの真下だ」
「それってつまり、鏡天満宮のすぐそばってことやんね!」
それだったら、西門橋のそばまでたどり着きさえすれば、なんとかなりそうだ。
「カムフラージュのために、カタハネとハンの者たちに、鏡天満宮に向かうふりをしてもらおう」
雷神がそちらに気を取られた隙に、かなめと博が西門橋方面に向かう作戦だ。
「あんたたち、まず承天寺さんに行かんね。そこから、御笠川沿いに海の方さん下って行くとよか。傘鉾ば開けば、周囲は明治の頃に戻るけん、川には舟が浮かんどるはずたい。それば使わんね」
マイヅル様に傘鉾を借りて、二人は承天寺に向けて走った。カタハネとハンの者たちが、うまく牽制してくれているようだ。雷は離れた場所に落ちていて、こちらを遮ろうとはしない。
大博通りを渡る。博多駅の駅ビルは、もう半ばまで怨念の海に沈み込んでいた。焦る気持ちを抑えて、承天寺の境内を抜けて、御笠川の岸に降りる。
「よし、傘鉾を開くぞ」
傘鉾を開いて、中に入る。博と手をつなぐと、マイヅル様の力が伝わってきた。布垂れの隙間から、外の世界を見渡す。
「これって……」
さっきまであったビルやマンションは姿を消し、周囲は木造の住宅ばかりになっていた。
「これが、明治の頃の博多の街なんだな」
博も感慨深げに、周囲を見渡した。御笠川の川岸には、木舟が幾艘も舫われていた。そのうちの一艘を拝借し、川を下る。
「うまくフクハクたちが、囮になってくれたみたいだな」
慣れない手つきで竿を操る博。二人で手をつないでいないと、マイヅル様から預かった力を発揮できない。つまりは、周囲を明治の頃のままで維持することができない。かなめは傘鉾を支えていないといけないので、竿を操れるのは博の片手だけだ。
やがて、川の側面に、幅二メートルほどのトンネル状の空間が、口を広げた。
「あれが博多大水道の入口だ」
満ち潮の時間帯だったので、舟のまま、奥へと進むことができた。傘鉾がひっかからないように注意しながら、協力して舟を進めた。
「ここが、明治の頃の、博多の地下になるとやねぇ」
福岡市になるか博多市になるかでさっぱそうらんの大騒ぎがあったあげく、「博多市の怨念」が生じることになった時代だ。
「ねえ、博君。どうして博多市の怨念は、いつまでも発生し続けるとやか?」
「そりゃあ、博多市が実現しなかったからに決まってるだろう?」
「でも、もう明治の頃から百年以上が経っとるとよ? 今は福博の争いもなくなって、分け隔て無く街は発展しとるとに、どうしていつまでも、怨念が生み出されるとやか?」
「そう言われたら、そうだな……」
竿を操りながら、博も首をひねっている。
そのうち、水道の中の水深は浅くなり、舟が底をこすりだした。博と共に舟を降り、膝近くまで水に没しながら、先へ進む。
「博多大水道は、途中に二箇所、曲がり角があったはずだ。冷泉公園の北側のあたりで右折、そして、今の博多座のあたりで左折。あとはまっすぐ歩けば、鏡神社のすぐそばだ」
「う、うん……」
先を急ごうとする博だったが、かなめは、何かを感じて立ち止まった。遠くから、何かが呼んでいる気がした。
「どうしたんだ、かなめ?」
博が促す。一緒に傘鉾の中に入って手を握っているので、かなめが足を止めたら、博も進めない。
「さっさと終わらせて、博多市の怨念なんか消し去ってしまおうぜ。さもないと、あの場所に公園を作ることもできやしないからな」
怨念への敵意を剥き出しにして、博が足を早めようとする。怨念を消したい思いはかなめも一緒だ。だけど、何か違う。
「ねえ博君、博多市の怨念ば、敵って思ったらいかんよ」
「はぁ? だって、博多市の怨念は、福岡市をむちゃくちゃにしようとしてる、テロ組織みたいなもんじゃないか」
「ばってん……、立場も考え方も違うけど、怨念もずっと、博多の街ば守ろうとしよるっちゃない?」
博はかなめの言葉を、鼻で嗤うようだった。
「戦う相手のことまで考えてたら、こっちが自滅しちまうぞ」
「でも、敵のことばよくわかっとかんなら、作戦の立てようもなかやないね」
「足りない頭で作戦立てようったって、ろくな案は浮かばないだろう。いいから黙ってついて来いよ」
売り言葉に買い言葉で、二人ともヒートアップしてきた。何かがおかしいと思いながらも、止められない。
「そげん言うならもう、よかよ。うち一人で行くけん、ついてこんで!」
博の「よかよ」アレルギーはわかった上で、敢えてそう言ってしまった。
「馬鹿! 傘鉾から出たら、そこは明治じゃなくって令和の現代で、土の中に埋もれちまうんだぞ。そんなこともわからないなら、勝手に先に行って、生き埋めになってろよ」
「なんねーっ!」
「なんだよ!」
傘鉾の中で睨み合う。だが、睨み合いはすぐに、意外な事態で幕を閉じた。
「傘鉾が、どんどん縮んできよる!」
四人ほどが入れる大きな傘だったのに、今は一人用の雨傘くらいの大きさになってしまっていた。
「そうか……。俺たちは、信頼して手を握りあっているからこそ、マイヅル様の力を借りることができるんだ」
「喧嘩したら、マイヅル様の力が届かんごつなってしまうとたいね」
二人で深呼吸して、気分を落ち着かせる。
「カタハネとハンの者に仲良くしろって言うとってから、自分たちが仲違いしたら、ざまぁなかね」
「そうだな……。だけどおかしいな、なんだか急に、かなめに反発心が沸き上がってきてしまったんだ」
「うちも急に……。なんでだろう?」
二人は顔を見合わせた。答えは一つだ。
「怨念が、俺たちを引き離そうとしているみたいだな」
二人は改めてつないだ手に力を込めた。マイヅル様から託された力が、つないだ手から、二人の身体に満ちた。
「よし、これで大丈夫だ。行こう、かなめ」
「うん」
仲直りした二人に、博多市の怨念は手出しができずにいるようだ。
「よし、これで、怨念なんか寄せ付けないぞ」
博が意気込んだ。やっぱり、怨念は敵でしかないのだろうか? わだかまりを抱えたまま、博と共に歩き続ける。
「おかしいな……。そろそろ、曲がり角にたどり着いてもいい頃なのにな……」
「もう、一時間は歩きよるごたる気がするとに……」
水道の中には何の目印もないので、どれだけ歩いたかわからない。だけど、普段の博多の街を歩く感覚からすると、いくらなんでも長すぎた。
「もしかすると、怨念に、同じ場所ば堂々巡りさせられとるとかもしれんね」
「そんな馬鹿な……」
念のため、かなめは石積みのでっぱりにハンカチを結わえ付けて目印にした。二人で足を速める。しばらく歩いて、二人は呆然として立ち止まった。かなめのハンカチが、目の前に現れたのだから。
「このままじゃ、夜が明けちまうぞ!」
進むこともできず、博が言葉に焦りをにじませる。
「博君、焦ったら、怨念の思う壺かもしれん」
「……そうか、俺も、心の隙を怨念に利用されて、博多部封鎖に肩入れしちまったんだからな」
博は自嘲するように、そうつぶやいた。
「鏡天満宮か。つい半日前には、かなめと一緒にいたのにな……」
今はその場所は、限りなく遠かった。
「かなめはあの場所で、自分の心を正直に話してくれたんだよな。俺も横溝さん……、かなめのおばあちゃんに言われていて、そうするつもりだったのに……」
「仕方のなかよ。博多市の怨念に操られとったとやけん」
「だけど、俺の中にかなめを疑う心が少しでも残っていたからこそ、そこを怨念につけ込まれちまったんだ」
その濡衣は、マイヅル様が晴らしてくれた。
「俺も、正直にならなくっちゃな……」
博はそう言って、つないだ手に力を込めた。
「中学生の頃、親の転勤で博多に住むことになって、自分なりに博多に溶け込もうと努力してきたんだ」
「博君は、生まれた時から博多に住んどったうちたちよりもよっぽど、博多のことば知っとったもんね」
「必死だったよ。過ごしてきた年月は、どうあがいても、追いつくことはできないしな。今思えば、覆せない差を、博多の知識っていう鎧をまとうことで、克服しようとしていたんだろうな」
「そうやったとたいね……」
つたない博多弁で、友人たちに馴染んでいたように見えていた博。心の内の葛藤を、かなめはどれだけわかってあげていただろうか。
「そしてあの、文化祭の事件だ。博多っ子なら誰でもわかる『あの言葉』で大失敗をしちまって、俺の心の鎧は、あっけなく壊されてしまった。お前はどうあがいても、博多っ子にはなれないんだって烙印を押された気分になっちまったんだ」
暗闇の中での歩みと共に、博は、封印し続けてきただろう自らの心に、深く入り込んでいった。
「恥ずかしさを受け止め切れなくって、博多への憎悪で心をごまかすしかなかった。かなめが手を振りほどいたのも、何か理由があるんだろうって、薄々は気付いていたんだ。だけど、それを深く考えると、自分の六年間が否定されてしまう気がして……。だから逆に、かなめも含めて博多すべてを否定して、嫌悪することで、心の均衡を保とうとしたんだと思う」
そうして博の、博多の知識は人一倍持っているのに「博多嫌い」という、複雑な性格ができあがってしまったのだろう。
「博君、ありがとう。正直に話してくれたけん、もう、よかよ」
そう言うと、博が微かに身じろぎして、足を止めてしまった。
「あっ……、ゴメン。また使ってしもうた」
謝るかなめに、博は首を振った。
「いや、それを乗り越えない限り、俺の博多での時間は、九年前で止まったままだからな」
そう言って、再び歩きだす博。
「いつか、その言葉を自分で言える時が来たら、その時、俺は、本当に博多のことが好きだって言えるんだろうな」
「博君……」
九年前で止まったままだった時計が、動き出した気がした。
その瞬間、何かが心に訴えかけてきているのがわかった。
「ねえ、博君、怨念に意識を集中して」
「え? どういうことだ?」
「怨念が、何か伝えてきよるとが、わからん?」
二人で目をつぶって、周囲に渦巻く怨念の「伝えるもの」と向き合った。
「時計……、止まった時計?」
そのイメージは、かなめの心の中に、ありありと浮かんだ。
「これは、昔の駅の……改札口みたいだな」
博にもまた、かなめと同じ光景が見えているようだ。
「それじゃあ、訴えかけよるとは、昔の博多驛の改札口にあった時計ってことね?」
「おそらくそうだろう。そうか……。俺たちが心を通じ合わせたから、マイヅル様から預かった力が広がって、傘鉾の周囲まで明治の頃に戻って、当時の時計にシンクロしたんだな」
明治の頃、博多市にするか福岡市にするかで騒動が生まれ、その帰結として生み出されたのが、博多驛であり、博多市の怨念だ。
「明治の頃は、誰もが時計を持っていたわけじゃないし、今みたいに出発を知らせる電光掲示板があったわけでもない。大きな駅の改札口には、必ず時計が掲げられていたはずだ」
「その時計が、どうして……?」
こうして地下にいることと、何か関係あるのだろうか?
「博君、時計の訴えば聞いてみよう」
時計は、「時が止まった」時の事を克明に記憶していた。初代の驛舎の取り壊し……。その時、取り外された時計は、工事の際に、基礎のさらに奥底に封じられたのだ。
「初代の博多驛は明治の終わりの頃に取り壊された……。その時に、時計は当時の驛長の手によって、驛の地下深くに埋められたんだな。博多驛は、博多市が実現しなかった代償として生み出された……。驛の象徴でもある時計には、驛に込められた『博多市』の悲願が込められてしまったんだ」
「それじゃあ、博多市の怨念は、時間が止まったままの時計のせいで、いつまでも発生し続けよるっていうとね?」
今の福博の街の発展も融和も知らず、百年以上前の「怨念」を抱え込まされた、「止まった時計」が、怨念の発生源だったとは……。
「あんたたち、なりたくて怨念になったわけじゃなかったとやね?」
見えない「怨念」に向けて、かなめが呼びかけた。
「きっと、私たちが、何とかするけん。そいけん、通してくれんね?」
かなめの言葉に、怨念がたじろいだのがわかった。だが、まだ翻意させるまでには至らないようだ。
「博君、今の福博の発展した姿ば、心に思い浮かべて」
「止まった時計に見せてやるんだな。わかった」
百年以上の時の流れ……。その間に、福博の街には発展と、いくつもの苦難が訪れた。昔ながらの博多の街の商業の発展と競い合うように、西鉄電車が敷かれ、福岡にもまた、商都としての繁栄が訪れた。
博多と福岡の分断を否定し、大きな「福岡」としての発展の礎を築いたのが、渡辺通りの名前の由来の、渡辺与八郎だ。財産をはたいて作られた田んぼの中の一本道に、市電が走り出す。その市電の勢いと共に、かなめと博は、一つ目の曲がり角を曲がった。
歩く先に、二つ目の曲がり角が訪れた。それは、福博の発展の「曲がり角」でもあった。戦争だ。大戦での空襲によって、福博の街は灰燼と化した。それでも福博の人々は希望を失わず、一から街を作り直したのだ。そして、どんたくが博多だけではなく、福博の祭りとして定着し、山笠も、福岡の街まで舁くようになった。今では博多と福岡は、時に競い合い、時に協力し合う、恰好のライバル同士だ。
福博の街の発展と融和は、まるで、かなめと博みたいだ。反発しあいつつも、互いの「違う面」があるからこそ、助け合い、互いを認め合うことができるのだ。
福博の離反を、自分たち二人の心の離反と結びつけ、かなめと博は、怨念と共に、明治からの博多の発展の道を歩き続けた。
「あれは、扉……?」
怨念の青白い光が、扉となって前方を塞ぐ。だが、その光は、今までのような、心を寒々とさせるような感じではなかった。澄み切った青空のような光が、二人を包み込んだ。
「かなめ、開けるぞ」
「うん」
つないだ手を扉に向ける。軋んだ響きと共に、扉が開いた。
やがて……。向かう先に、ぼんやりと明かりが見えてきた。博多大水道の、もう一つの出口だった。
「たどり着いたぞ!」
傘鉾を閉じる。現代に戻ったそこはまさに、鏡天満宮のすぐそばだった。二人で神社の社に駆け寄った。扉を開けて、祀ってある古い鏡を手にする。
「よし、このまま櫛田神社まで行って、雷神に光をあてよう」
「夜明けまで、後一時間しかなかよ。急がんと!」
雷神が、鏡神社での異変に気付いたのだろう。夜空の黒雲が放電するように光を放ち、こちらに雷の刃を向けてくる。
「博君!」
「かなめ!」
しっかりと手をつなぐ。不思議に、怖さは感じなかった。雷が、二人を直撃する。だが、マイヅル様の力が分厚いバリアーとなって跳ね返し、雷は二人に何の痛痒も与えなかった。今の二人は、マイヅル様から預かった力を、存分に使うことができる。

二人はマイヅル様の待つ櫛田神社に戻った。雷の直撃を弾き飛ばす二人を、カタハネとハンの者は、あっけにとられた様子で見ていた。
「博とかなめよ。心が通じ合ったごたるな」
マイヅル様が、二人の姿に大きく頷いた。
「さあ、雷神ばちいっとばっかし、こらしめんといかんごたるな。二人とも、鏡ば雲の方に向けてくれんな」
手を携えて、鏡を空へと向ける。マイヅル様の力を借りて、光が夜空にほとばしった。勢いよく水を放出する消防車のホースを抱えている気分だ。光は黒く分厚い雲を突き抜け、まっすぐに夜空を貫いた。
群雲の中で、花火が暴発したように、雷が四方に飛び散る。鏡の光は、雷に負けることなくまっすぐに、雲の中に光を放ち続けた。

続きはこちらから→第十五話

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「博多さっぱそうらん記」とは

福岡県出身で現在も福岡に在住する作家、三崎亜記氏による新作SF小説。

1890 年の「福岡市の名前を巡る騒動」と2016 年に起きた「博多駅前道路陥没事故」から着想を得て、「博多を名付ける勢力が勝っていた世界」=「羽片世界」がもし福岡市にあったとしたら、その勢力が現実の福岡をも転覆しようとしているために陥没事故が起こったとしたら、という物語を紡ぎだしました。仮想の「羽片世界」の面白さはもちろんですが、「せいもん払い」「どんたく」「玉せせり」など福岡独自の風習も物語の骨子に組み込まれて入るため、ご当地小説としても楽しんでいただける作品です。

 

著者について

三崎亜記(みさき・あき)
福岡県生まれ。熊本大学文学部史学科卒業。

2004 年に『となり町戦争』で第17 回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。デビュー作と『失われた町』『鼓笛隊の襲来』で直木賞の候補となる。そのほかの作品に「コロヨシ!!」シリーズ、『バスジャック』『廃墟建築士』などがある。

 

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