OITA ART TRIP(大分県)大分のアートとカルチャーを巡る旅。~別府市編part1~
大分ってどんなとこ?
そう聞かれたら、真っ先に「アートの街だよ」と答えよう。
未知の感覚を味わうアートも、日常の延長線上にある土着のカルチャーも、
アートが誘う、見たことない大分の旅へ。
今回は、別府市をご紹介。
|末広温泉
多様性の湧き出る街で出会った路地裏の大衆浴場と1 人の画家
別府市の路地裏にひっそりと佇む『末広温泉』は、江戸時代から続く大衆浴場だ。昭和47年から現在の姿で営業を続けるこの場所は近年、後継者不足で約1年間の閉鎖を余儀なくされていたものの、2021年の春から街の有志によって営業再開に漕ぎ着けた。そこで一役買ったのが画家の勝正光さんだ。「担い手がいないからという理由で、ここがなくなるのはもったいないなと。よその街で温泉の管理をしたいと思ってもできないですから」と笑う。
温泉の壁には、日本画家の大平由香理さんによって男湯には女の山の鶴見岳、女湯には男の山の由布岳が描かれており、山と混浴気分を味わえる。「アーティストって誰一人取りこぼさない多様性のある世界を作り上げたくて活動しているわけですが、この温泉に来たときにいろんな人が同じ湯に浸かっている光景を見て“求めていた世界がここにあるじゃない”って衝撃を受けました。僕にとって別府の街も温泉も、その時々で必要な答えをくれる先生のような存在なんです」。路地裏の湯の中には、アートの本質がぷっかりと浮かんでいた。
2009年に開催された現代アートの祭典『混浴温泉世界』の参加アーティストとして『清島アパート』で2カ月間の公開創作活動を行ったのをきっかけに別府に移住。史実に基づいた別府特有の多様性を細密な鉛筆画で表現する勝さんの作品は、別府市の『ガレリア御堂原』にも展示されている。
|大分香りの博物館
香りの魔法にかかる瞬間
2007年に開設された『大分香りの博物館』は、全国でも珍しい香りをテーマにした博物館。館内には、紀元前の香油瓶や香炉、ロココやアール・ヌーヴォー時代に香水文化が誕生するまでの歴史や当時の香水瓶などコレクション約3600点が並ぶ。
「香水瓶とは、香りの住む家である」とは、世界的な香水デザイナーピエール・ディナンの言葉。存在感を放つ香水瓶を眺めていると、そこに込められた美しい夢や希望が立ち昇ってくるよう。香水の魔法に魅せられた後は、自分だけの香水を作る調香体験もオススメ(要・事前予約、別途料金)。
|地獄蒸し工房「鉄輪」
パワーみなぎる湯治場のヘルシーフード
別府の源泉は熱い。特に鉄輪・明礬温泉あたりの源泉は高温で、噴出する蒸気は100度に達することもあるほどとか。高温な蒸気を生かした調理法は『地獄蒸し釜』と呼ばれ、江戸時代からこの地で広く親しまれている。さらに美肌の湯と称される塩化物泉の成分をたっぷり含んだ蒸気は、食材の甘味を引き出し、ほのかに塩味を帯びた味わいに仕上がるのが特徴。まずは素材本来の美味しさを味わい、ぽん酢や塩、別売の『ずっととろけるチーズ』(150円)で味変をしながら湯治場のヘルシーフードを満喫して。
地獄蒸し玉手箱
豚まん、季節の野菜、塩麴鶏、卵がセットになった「地獄蒸し玉手箱(2100円)」。セットのコチュジャン味噌も嬉しい
鉄輪とりめし
竹の皮に包まれた「鉄輪とりめし(400円)」。無仕立てのもち米のモチモチとした食感がたまらない!