OITA ART TRIP(大分県)大分のアートとカルチャーを巡る旅。~別府市編part2~
大分ってどんなとこ?
そう聞かれたら、真っ先に「アートの街だよ」と答えよう。
未知の感覚を味わうアートも、日常の延長線上にある土着のカルチャーも、
アートが誘う、見たことない大分の旅へ。
今回は、別府市をご紹介。
別府市編part1 ←クリック
|別府市竹細工伝統産業会館
奥深き竹細工の世界に浸る
2018年にリニューアルした『竹細工伝統産業会館』。竹のアーチをくぐると、そこは職人たちの息づかいを手に取るように感じられる空間が広がっていた。大分県で唯一『伝統的工芸品』に指定されている『別府竹細工』。館内に並ぶ約150点の展示は、暮らしの道具からアート、竹細工のいろはを綴った版画まで、竹細工の魅力がぎゅっと詰まった内容。隣接する『Beppu bamboo museum SHOP&CAFE』は、竹林を眺めるモダンな空間で心安らぐひと時を過ごせる穴場。バターナイフやかご、アクセサリーなど永く使える竹のアイテムは、お土産にも。
一般的に竹笹類と呼ばれる竹は、世界中に1 2 0 0 種類ある中で600種以上が日本に生息しています。『別府竹細工』は、『真竹(まだけ)』という種類の竹を使って製作することが多く“編み”の技術を生かした作品が豊富です。例えば奈良には、高山茶筅(ちゃせん)と言って、お抹茶を点てる時に使う茶筅の一大産地がありますが、ひと言で“竹細工”と言っても、その土地に根付いた技術や自生する竹の種類などによって作る竹細工にも地域性が見られます。
良質な竹が自生する大分県は竹細工が盛んですが、別府の竹細工が商業として発展したのは、室町時代。海から塩を担いで運ぶための籠が作られたという古い記録が残されています。そこから江戸時代になると、別府温泉の名が全国に広まり湯治客が多く訪れるようになります。当時は、身一つで湯治場を訪れ、体が回復するまで自炊をしながら湯治する、というスタイルが主流。
すると、日常的に切った野菜を入れたり、お米を研いだりするためのザルや、荷物を持ち運ぶための籠などの日用品が必要になります。そこで身体が回復して家に帰る時に、実際に使い勝手のよいザルや籠を家族に買って帰ろう、といういわゆるお土産物としての竹細工の需要が拡大。それらは非常に売れ行きがよかったため、作り手側ももっと良いものを、もっとオリジナリティがあるものを、と切磋琢磨するうちに“編み”の技術が一気に発展したと言われています。
『別府竹細工』の基本の編み方は8種類ですが、実際には200~300種あると言われています。個々の技術がそれほど成熟していた証ですよね。私はアパレル業界にいたこともあり、以前からものづくりが好きだったのですが、工芸品の中でも材料づくりから完成まで、すべて1人でできる竹細工に興味を持ち、この世界に飛び込みました。別府に来て7年目ですが、これだけの数の編み方が独自に進化を遂げてきたという事実は『別府竹細工』ならではだと実感しています。そして、そのすべての技術を把握している人はどこにもいない、という点にもたまらなく惹かれてしまうのです。
|SPICA
想像力を掻き立てる竹のモノ
店主の高野さんのモノを愛でる気持ちが伝わる空間『SPICA』。竹細工職人に直接オーダーしたという無塗装のスプーンは竹という身近な素材と、スッカラのように平らに仕上げた非日常的なフォルムが好バランス。「口に含んだ時に感じる自然素材ならではの面白さを楽しんでもらえたら」と高野さん。大分県由布市にアトリエを構える高見八州洋さんの竹のバッグは、存在感のある端正な編み地のバスケットに、レザー職人が持ち手を施した同店のオリジナル。使うシーンを思い浮かべて自然と顔がほころぶ、とっておきのアイテムに会いに行こう。