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【インタビュー】Fuku Spo – アビスパ福岡/ジョン マリ

FW ジョン マリ(背番号45)

再び、この地で。

 

リーグ戦も正念場にさしかかってきた。

なかなか勝利がつかめないアビスパ福岡は、

このまま波乱の降格争いに巻き込まれてしまうのか…。

そして、再び福岡の地に戻ってきたジョン・マリは

どんなプレーでサポーターを魅了してくれるのか。

 

期待と不安が混じりあう中で、

我々にできることは最後まで彼らを信じて見守ること、

ただそれだけだ。

 

(取材・文/岩井咲里香)


七夕の夜に舞い降りた吉報

 

7月7日。

サポーターの願いを織姫と彦星が叶えてくれたのだろうか。

 

「ジョン・マリ選手完全移籍加入のお知らせ」という突然のリリースに福岡中が歓喜した。

 

ピッチの中でも明らかに一回り大きい体格と、簡単には倒されないフィジカルの強さ。そして、思わず引き込まれてしまう、まるで少年のような屈託のない笑顔。

’21年3月にアビスパ福岡へ移籍し、5月の浦和レッズ戦でJ1リーグ戦初得点を記録。嬉しさのあまり宙を舞う姿が印象的だったジョン・マリだ。

 

昨年3月、契約期間満了で退団した彼は、なぜ福岡に戻ってくることを選択したのだろうか。

 

「まず、再びオファーを貰った時は、正直ビックリしました。また戻れるとは思っていなかったんです。でも、昨年の記憶が蘇ってきて、もう1度アビスパ福岡でプレーがしたいと思いました。福岡は僕のホームだと思っていますし、やっぱりアビスパのサポーターは熱狂的で、彼らの前でプレーすることにすごく興奮するというか、自分にとって力になるんですね。断る理由がありませんでした」。

 

 

そんな彼が、アビスパ福岡への復帰を一番に伝えたのはジョルディ・クルークス選手。サウジアラビアでプレーしていた時も常に連絡をとっていたのだとか。「外国籍選手はみんな家族同然の存在」と語る彼の表情はとても穏やかだった。

 

 

福岡に帰ってきた要因には、長谷部監督の存在もあった。彼の目に、監督はどのように映っているのだろうか。

 

「すごく尊敬しています。自分にとって、なんですかね…、お父さんのような存在。僕はサッカー選手として長いキャリアを積んできましたが、やはりシゲさんの新しい視点や考え方など、この年になっても学ぶことがたくさんあるんです。シゲさんはすごくスマートで、謙虚で天才的な方なので、サッカーはもちろん、日々の会話からも学ぶことが多くあります」。

 

アビスパ福岡を離れていた約半年間、彼はどのように過ごしていたのか。サウジアラビアでのシーズンについて尋ねると、「すごくしんどかった」と一言。

 

そして、彼は続けてこう答えた。

 

「今振り返っても、アップダウンが激しいシーズンでした。大事な試合の2日前に左の関節を怪我してしまって。リハビリしてなんとか復帰しましたが、体のバランスも良くないし、左足も痛みが残っていて…。周りには調子が戻ったように見えるゴールやシュートでも、自分にとってはしんどい状態だったんですね。ただ、チームはFWにボールが入って点を取れるような良いフットボールをするチームではあったので、自分としては少し運に恵まれなかったですが、その中でも良い経験はできたと思います」。

 

豪快な“理不尽プレー”の裏には、地道に積み重ねた努力があった

 

DF陣が数人がかりで止めに入ろうとも、屈強なフィジカルを持つ男は倒れない。

 

毎試合驚かされる彼の強さの秘訣は、食事・トレーニング・睡眠だという。

 

「食事にはかなり気を遣っています。また、僕のフィジカルはトレーニングによって培われたものなんです。サウジアラビアで大きな怪我をする前は、多い時は週4~5の頻度でジムに通っていました。奥さんからも『クレイジーじゃない?』って言われることも(笑)。でも、そのトレーニングのお陰で、間違いなく今の自分がいると思います。睡眠時間も大事で、7~8時間は必ず寝るようにしています」。

 

豪快なプレーの裏でサッカーに真摯に向き合う彼は、周りの選手のこともよく見ている。

 

Jリーグで印象に残っている選手を尋ねると、「アビスパでは、ジョルディと前寛之。城後はレジェンドなのであえて名前を出しません。家長(川崎F)、大崎玲央と槙野(神戸)、鈴木優磨(鹿島)、あと名前はわからないけど浦和の若手も躍動していました。外国籍だとレアンドロ・ダミアン(川崎F)、ウタカ(京都)、ピトゥカ(鹿島)、マテウス(名古屋)、イニエスタ(神戸)は言うまでもない! あと、チアゴ・サンタナ(清水)には尊敬しかないです。チームがなかなか勝てない状況でもたくさんゴールを決めて、自分のプレーを貫いている姿は素晴らしいです!」と、他チームの選手にまで、リスペクトの言葉が止まらなかった。

 

 

アビスパ福岡に復帰してまだ3カ月ほどだが、彼にとってもサポーターにとっても忘れられない試合となったのが、ルヴァン杯準々決勝1回戦。控えメンバーは4人で、そのうち2名がGKという、厳しすぎる条件での戦いとなった。

 

「負けてもしょうがない…」と、弱気になるサポーターも少なくなかったのではないか。

 

しかし、そんな不安を一気に払拭させてくれたのはこの男だった。

 

前半終了間際の44分、GK村上のゴールキックをフアンマが競り勝ち、ヘッドで前線に送る。素早く反応したジョン・マリが頭でコントロールし、強烈なボレーシュートでネットを揺らした。

 

リーグ戦も残すところ4試合。苦しい状況が続くが、最後にはこの時のような彼のとびきりの笑顔が見たい。

 

 

■プライベートに迫るQ&A

Q .福岡でお気に入りの場所は?

A .真っ先に思い浮かぶのは『ウルフギャング・ステーキハウス』。愛しています。

家族はビーチや天神も気に入っています。

 

Q. 奥さんとの出会いは?

A .友人と一緒にご飯を食べていた時に隣の席に座ったのが今の奥さんで、連絡先を交換して何度かデートしました。出会ったのはセルビアですが、シーズンが始まるから僕はスロベニアに戻らなきゃいけなくて。それを伝えると彼女が泣いて、「付いていく」と言うんです。冗談かと思っていたら本当に来てくれて、彼女のリスクを顧みない行動力に心を動かされました。彼女はロースクールに通っていたのですが、そんな賢い女性と出会って結婚するなんて考えてもいなかったので、人生何が起こるかわからないですね。

[PROFILE] ジョン マリ

フォワード 背番号45

生年月日 1993年3月9日

身長181㎝ 体重82㎏

出身地 カメルーン

カメルーンのクラブの下部組織で育ち、16歳でトップチームデビュー。その後、タイ、セルビア、スロベニア、中国のクラブを渡り歩き、昨年3月に深圳FCからアビスパ福岡へ期限付き移籍。今年3月に移籍期間満了に伴い退団し、サウジアラビアのアル・シャバブへ。そして7月、完全移籍で福岡に帰ってきた

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