《インタビュー》吉川 友「自分の殻を破りたい」
約1年ぶり、通算11作目となるニュー・シングル『さよなら、スタンダード』をリリースした吉川友さんにインタビュー。グループアイドル隆盛の現代でソロアイドルとして奮闘中の彼女は、今回のシングルについて「大森靖子さんの楽曲は、いつもと違う私を引き出してくれる」と話してくれました。今作のレコーディング裏話や、「自分の殻を破りたい」という自身についても素直に伝える姿が印象的な吉川さんに迫ります。
■今回の曲は、ライヴでファンの方のノリにくそうな顔を見るのが楽しい
—最新曲『さよなら、スタンダード』じゃ、前作『歯をくいしばれっっ!』に続いて今回も大森靖子さんの作詞・作曲になりますね。先日、大森さんの福岡公演を観に行ったんですが、MCで「楽曲提供したアイドルから、『大森さんの曲は歌うのが難しい』とよく言われる」という話をしていたんですよ。
吉川:歌いにくいか歌いやすいかで言うと、歌いにくいですね(笑)。歌いにくいと言うか、難しくて。大森さんに歌詞を書いていただくのは今回で3回目なんですけど、大森さんの曲は毎回頭を抱えながらレコーディングしている印象がありますね。サビは特にキーが高くて、喉を潰したら歌えない楽曲ナンバー1です。
—歌い出しのセリフ部分はまさに大森さんイズムを感じますし、編曲がサクライケンタさんということで、サウンド面はサクライさんがプロデュースしているMaison book girlのような変拍子と曲調で。アイドルの中でも吉川さんに王道のイメージを持たれている方は多いと思うんですけど、それだけに大森さんとの楽曲は吉川さんの既存のイメージにはないものだと思いました。
吉川:大森さんとの楽曲は、アイドルファンだけでなくいわゆる“音楽ファン”の方にも「いいね」と言ってもらえることが多くて。
—レコーディングでは「ミキティみたいに歌って」と大森さんからリクエストされたそうですね。
吉川:大森さんらしい、わかりやすい表現でしたね。藤本美貴さんみたいに少しツンケンと言うか、そんな感じで歌えばいいのかなと思ったんですけど、難しすぎてレコーディング中に諦めてしまったんですね。それもあってさらに私のツンケンが加わり、できあがったんですけど…。本っっ当に難しすぎて(笑)! 基本的には「好きに歌って」と言われたんですけど、私が歌い方がわからない時は大森さんがブースに立って歌ってくれたりもしましたね。リズムが取りにくくて、よくわからない…いまだにちょっとわかってないんですけど、この曲を歌って一番「おっ?」となるのはファンの方たちですね。アイドルソングはコールを入れられる曲が多い分、今回の曲は初めて聴いた方はコールを入れようとしても「おおおっ?」となってノリにくそうで、その困惑している顔を見るのが毎回楽しいんです(笑)。コールをどう入れようかみんな探り探りで。私、6月に『やついフェスティバル』で編曲のサクライさんプロデュースのMaison book girlさんを初めて観たんです。ツイッターでファンの方からも「今回の曲はMaison book girlに凄く似てるから聴いてみて」と言われていて。それでフェスで「なんか私の曲に似ているな」と思って観てみたらMaison book girlさんで。「あ、これか!」と思いました(笑)。
■「器用貧乏」と言われる自分の殻を破りたかった
—歌詞に関しては共感する部分はありますか?
吉川:冒頭の部分ですかね。大森さんいわく、「吉川さんはいつも平均点以上。スタンダードで王道だけど、それを超えていけ!」みたいな想いを込めて作ってくださったということで。「なんでもできるってなんにもないのと似てるね」という歌い出しが、なんて言うんだろう…自分で言いたくないんですけど、歌をやったりダンスをやったり舞台をやったりで、結構いろいろやらせてきていただいているんですけど、「器用貧乏」と言われることが最近凄く多くなってきて。殻を破りたいなとは私も思っていたんです。そういった意味では今回の曲は今までの自分にサヨナラできているんじゃないかなと思います。
—これまで、王道アイドルゆえの難しさみたいなものを感じる場面はありましたか? 良い曲を普通に歌うだけでは、今のアイドルは評価されにくいのかななんて思いますが
吉川:そういった意味では、2〜3年前から衣装が奇抜になったりしたことはあったんですけど(笑)。そうですね…いろんな評価はありました(笑)。けれども! 大森さんのような方と組むのは私自身刺激になります。道が見えるといいますか。
—カップリングの『アンバランス アンバランス』は、曲調はこれまでの吉川さんらしいですね。
吉川:ポップですね。凄くポップです。
—田舎から出てきた人の背中を押すような応援ソングですよね。「乗れなかった急行に腹を立ててた ちょっと待って5分経てばすぐに来るじゃない 1時間に2本だったあの日を思え」という歌詞など、私もですが田舎出身者には響きます(笑)。
吉川:『アンバランス アンバランス』は、私の地元の茨城の思い出を聞かれて、その思い出を歌詞に入れてもらったんですね。「コンビニにならんでいるお惣菜見て お母さんの手料理を思い出している 実家行くと絶対出る愛おしい煮物」とか、「地元から結婚、出産の報告 なんかうらやましい」という部分などですね。
—地元から来ていますか? 結婚報告が。
吉川:多いですねぇ〜。本当多いです。なんか置いていかれている感はあるんですけど、しょうがないかって(笑)。
■hydeさん、宜しくお願いします
—先ほどの話にもありましたが、吉川さんは音楽以外に舞台などでも勢力的に活動されていますよね。そういった活動が音楽活動に還元される部分はありますか?
吉川:声量は、いつも舞台終わりは「なんか凄くない? 調子いいね」と言われることが多いです。ミュージカルなどの後は特に。
—台本をおぼえることと、歌詞をおぼえることがリンクしたりなどは?
吉川:…まったく(小声)。結びつかないですね。両方おぼえるの遅いです。苦手ですね。台本の時は、自分のセリフ前の人のセリフを録音して、自分のセリフだけ空けて言いあいっこしておぼえるんですけど、自分の歌はひたすら聞きまくる感じですね。一回歌詞が飛ぶと全部バラバラになっちゃうんですよ。戻れないんです! 思い出せなくて(笑)。特に今回みたいな大森さんの曲は音が詰まっているので、言葉が待ってくないんですよ。早口言葉だし、面白い言葉遊びも多いので。
—パーソナルなこともお聞きしたいんですが、ふだん聴く音楽はどんなジャンルなんですか?
吉川:私、アイドルソングをずっと聴いてきて、デビューするぐらいまではハロー!プロジェクトしか聴かない生粋のアイドルオタクだったんですけど、「いろんな音楽を聴いた方がいいよ」と言われて、洋楽? 海外の音楽やロック…ONE OK ROCKだったりUVERworldだったり。私はミーハーなので、流行ってる曲を基本的に聴くという感じですね。最近は、韓国の…TWICE? TTポーズの。TWICEにハマって毎朝聴いてますね。ハマったら同じ曲を飽きるまでひたすら聴くタイプなんです。その前はAOAや、超特急、DISH//などを聴いていましたね。
—そういった聴いている曲たちに刺激を受けて、自身の楽曲制作の際にいろいろリクエストされたり?
吉川:カッコいい曲が歌いたいと思って、「後藤真希さんっぽい、セクシーでカッコいい大人の女性の曲でお願いします」と言ったことはあります。できあがった曲が7枚目のシングルの『URAHARAテンプテーション』というシングルで。他に、「こういった曲を歌ってみたい」というのは、中島美嘉さんの『GLAMOROUS SKY』。この曲は、カバーしたいぐらい大好き! 凄く理想的なカッコいい曲ですね。
—じゃあ、次のシングルはhydeさん(『GLAMOROUS SKY』作曲者)に作ってもらわないとですね。
吉川:そうですね! ぜひお願いしたいです(笑)。
<Release>
発売中 Single『さよなら、スタンダード』【通常盤】1000円+税