【インタビュー】堀未央奈「色んな人の考え方や生き方が、少しでもその人なりの良い方向へ進んでいくように後押しできたら」
写真:山辺学(calm photo)
撮影協力:福岡バル ここにかたる。(福岡市中央区薬院4-8-30 P&R薬院ビル2階)
ギャラリー:SHUN SASABUCHI/From the series“A MOMENT IN COLOR”
「乃木坂46・堀未央奈の映画初主演作!」と言っても、映画『ホットギミック』はいわゆるハッピーなだけの胸キュンムービーではない。クリエイティブかつアーティスティックな映像表現で、現代を生きる若者のリアルを生々しく映し出した新時代の青春恋愛映画だ。福岡は薬院に3月にオープンしたばかりの『ここにかたる。』で、主演・堀未央奈の胸の内を聞いた。
—『ホットギミック』は堀さんにとって映画初出演にして初主演作となります。不安やプレッシャーも大きかったのではないでしょうか。
堀:最初は緊張していたんですけど、たくさんのスタッフさんやキャストの皆さんに支えられて、一人で抱え込むと言うよりかは、みんなで作ったからこそ「自分の初ちゃん」として向き合えたんだなぁと思って。自分自身も毎日役と向き合って、挑戦していってというのはあるんですけど、不安はクランクインする前の方がありましたね。クランクインしてからは大丈夫でした。お芝居が好きなんだなぁって思いましたね。
—乃木坂46としてのこれまでの経験が活きた部分、逆に今回の経験が今後アイドルとしての活動に活きてくるのではという部分はありますか?
堀:乃木坂の経験が生きたなぁと思ったのは、入って半年でグループのセンターになったんですけど、やっぱりセンターがスタートだと一番目標としている部分が最初になってしまうので、あとは下がっていく一方で、自分としてはマイナスに考えちゃうことが多くて凄くデリケートになっていたんですね。 全然経験がないままセンターをやらせていただいて、どうしても自信が持てなくて。周りの先輩方が本当に凄く偉大だったんですけど、その悔しさとか自分に対しての嫌悪感みたいなのが、この役を演じていて初ちゃんの自分への自信のなさとかネガティブな考え方をしちゃうところに反映できて、とても感情移入できたので、振り返ると凄く辛かったなぁということでも、こうしてお仕事とかに活かすことができるんだなぁという発見は自分の中で大きくて。監督に救われた気もしましたし、『ホットギミック』をやってよかったなって本当に思いました。逆に『ホットギミック』を経験して、乃木坂の時は歌番組やMV撮影でも大体どこから撮られていてどういう表情してとか、構成的にも決められていることが多いんですけど、映画ってそういったことを気にしない、気にしちゃいけないものなので、そこは映画を経験して変わったというか、余計な計算をせずにカメラの前に立つことができるようになったので、表現する上でカメラの前や歌番組でも楽しんですることを映画の経験で学びました。
—山戸監督とは最初に乃木坂46のMV撮影でお仕事をされたんですよね。
堀:『ハルジオンが咲く頃』の時は、本当に限られた時間の中で撮らなくちゃいけなかったので全然話す機会もなく、あっという間に終わったんですけど。でもそのお芝居の演出が凄く独特で、みんなでピアノに合わせて踊るシーンとかでも振り付けが入ったり、「舞うように踊ってください」と言われたりとか、監督の頭の中にある世界観がアーティスティックなところが他の監督さんとは違って繊細で、女性ならではの視点で本当に素敵だなと同性から見ても思っていました。監督の『溺れるナイフ』も映画館でたまたま観ていたんですけど、やっぱり凄く興味が湧く演出でしたね。
— 全体的に絵画のように美しいシーンが印象的で、独創的な演出も多く、監督の頭の中のイメージをどうキャストの皆さんと共有しているんだろうと思いました。例えば堀さんと吉岡里帆さんのシーン。激しく言葉をぶつけられて、その2人の前を車が何台も通過してカメラを遮ります。ああいった撮り方は観たことないなと
堀:うんうん、キャストに被るのは普通嫌ですもんね。登場人物の心情に合わせてシーンの温度が違うというか、亮輝との公園での勉強会のシーンは、今度は2人以外に邪魔なものが一切映ってないんですよ。監督ならではの演出でシーンによって撮っているんだなというのは、完成した映画を観た時により強く発見しました。綿密に計算されている映像が、観ていて心地良いです。キャストみんなが“山戸ワールド”に浸っていました。
—“性”と“生”の匂いも強く感じる作品で、単純に恋愛映画だと思って観に行く方はビックリしそうです。
堀:山戸監督は今の10代の方に伝えたいことを熱く瞬間瞬間で撮られる方なんです。演じる側も全力でぶつかっていって、観ている人を救えるような映画にしたいという思いがあったので、演出や台本に不安はなかったですね。
—これまでに見られないような、感情を爆発させるシーンもありましたね。
堀:私は普段はあまり大きい声を出さないんですよ。怒ったら無言になるタイプなので。初ちゃんが大きい声を出したりするシーンは「自分じゃない、初ちゃんだ」と言い聞かせて演じていました。
—セリフも哲学的な言葉があったりと作品全体を通して深みを感じましたが、なにか印象的な言葉はありますか?
堀:梓の言葉で「心って、もっと、曖昧なものじゃないの。永遠に愛してるって思っても、次の瞬間、いらなくなっちゃう」というセリフがあって。恋に限らず瞬間的に熱中していても、ふとした時に飽きられちゃったり、自分が飽きたり、人の感情って本当に波があるなと思っていて。それって凄く切ないことだけど、そういったことも包み隠さず出しているのが『ホットギミック』です。よりリアリティがあって観ている人が共感しやすいと思うし、梓が言うからこそグサッとくる言葉だと思いました。
—10代のキラキラばかりではない生々しさがありますよね。
堀:私もどこかファンタジー感があって、「恋愛っていいよ。キラキラしてるよ」というポジティブな作品をこれまで観てきて、それはそれでハッピーになれるし憧れも持てるんですけど、誰しもどこか傷を負っていてそれにも気づかずに生きていたりして。『ホットギミック』に出合ってそれを思い出して、「今の自分だ」ってハッとする部分があると思うんです。そういう意味で新しいことを教えてくれる映画で、ある意味そういう映画の方が凄く自分のためになるんじゃないかなと。そういった映画がもっと増えて、色んな人の考え方や生き方が少しでもその人なりの良い方向へ進んでいくように後押しできるような映画がもっと増えていいたらいいなと、『ホットギミック』を撮っていて思いました。
—今作を通して女優業への意識の変化は?
堀:はじめましての方しかいない新しい環境で、役として挑戦していくというのは大変さもあるけどその分達成感も大きいし、お芝居が凄く好きなので、もっともっと撮影が続いたらいいのになと思いました。ずっと撮っていたかったです。
—この作品を通してどんなメッセージを伝えたいですか?
堀:10〜20代の方は鏡で自分を見ているかのように感じることもあると思います。他人事ではなく、観ている方に寄り添っている作品なので、そこで「もっとこうしなきゃ」「自分を大事にしなきゃ」と思っていただいて、山戸監督がたくさんのシーンに散りばめたメッセージ性を観ていただいた方なりに消化してもらえたら。恋に対しても自分に対しても強くあろうと思ってもらえたら凄く嬉しいなと思います。
’96年生まれ。岐阜県出身。国民的アイドルグループ・乃木坂46の二期生メンバー。’13年3月にオーディションに合格し、同年11月のシングル『バレッタ』でいきなりセンターに抜擢され、以降もグループの中心メンバーとして活躍。ホラー映画好きとしても知られる。主な出演作は『ザンビ』(’19)など。
■映画『ホットギミック ガールミーツボーイ』 6月28日(金)ロードショー
http://www.hotgimmick-movie.com/