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【インタビュー】Fuku Spo – アビスパ福岡/紺野和也

MF 紺野和也(背番号8)

ボールに触れている時間が

最高に楽しいんです。

ホーム開幕戦で勝利を掴むと、

順調に勝ち点を積み上げていくアビスパ福岡。

昨季課題とされた“攻撃力”を克服するには、

間違いなく紺野和也がキーマンになるだろう。

 

取材・文/岩井咲里香(編集部)


アビスパが変わる。

 

「紺野劇場」「福岡のメッシ」…。

 

今季、FC東京から加入したばかりの新戦力・紺野和也は、もう既にアビスパサポーターの心を鷲掴みにしている。

 

身長161㎝と、Jリーガーの中でも一際小柄だが、そんなことを微塵も感じさせないほど、大きな存在感を放っている。ドリブルでの推進力を武器に、相手DFをうまく交わしながらボールを前へ運んでいく。彼がボールを持つと、いつもワクワクさせられる。SB・湯澤聖人とのホットラインも見どころだ。

 

味方としては頼もしいの一言に尽きるが、対戦相手としては間違いなく厄介な存在だった。

 

昨シーズンのJ1リーグ第19節のFC東京戦。GK・永石拓海が、J1リーグ戦デビューを飾った日だ。1-1で迎えた61分。CKのこぼれ球を拾い、エリア外から左足でゴールを決めたのが紺野和也だった。

 

試合中は特に、持ち味であるドリブルに目がいきがちだが、秘めたる熱い気持ちにも注目してほしい。印象的だったのが第2節のセレッソ大阪戦。失点を喫して少しどんよりとしていた客席を、彼が煽ったシーンだ。

 

「もともとそういうタイプではないんですけど、ホーム開幕戦だったし、少し苦しい時間帯だったので…。サポーターがちゃんと応えてくれたので、勝ち越すムードを作れたと思います」。

 

もう割り切って、別のところで勝負しようと。

 

3~4歳の頃に、サッカー経験者の父からボールを買ってもらったのがすべての始まり。攻撃に関わっている時間が大好きで、当時から憧れの選手はメッシ。

 

「影響されている部分は大きいと思います。背も低いし、左利きだし、共通点があるのでずっと動画とか見て勉強していました。異次元すぎるので真似するのは難しいんですけど、自分なりに少しアレンジして使えそうなところを次の日の練習でやってみたり。身長にコンプレックスを感じたことは、ピッチ内ではないかもしれないです。もう割り切っていて、ヘディングでは勝てないなら違うところで勝負しようって思っていました。普段、街中を歩くときはもうちょい身長欲しいなとか思ったりもしますけど…(笑)」。

 

「○○のメッシ」という異名がついていることに関しては、「そう言ってくれるのは嬉しいですけど、少しプレッシャーですよね」と、照れくさそうに答えた。

 

中学時代はクラブチームC.A.ALEGREに在籍。ここでの時間が、今の彼のプレースタイルを築いたと言っても過言ではないようだ。「とにかくサッカーを楽しむというのがチームのスタイルで、ドリブルも好きにやらせてくれました。このクラブの監督のおかげで、今のプレースタイルがあると思っています」。

 

自由にサッカーをさせてもらえる環境で、自分だけの武器を磨き上げていった彼は、地元・埼玉の武南高校に進学した後、法政大学へ。

 

「高校までは全国大会にも出たことなくて、正直プロは厳しいかなと思っていました。大学2年の時に全国大会で優勝してから、少しずつ注目してもらえるようになった気がします」。

 

こうして、プロのスカウトからも一目置かれる存在となり、FC東京、神戸、札幌からオファーが届いた。「正直、めちゃくちゃ迷いました。3チームともいいチームなので…。でも、FC東京のDFが代表クラスばかりだったので、一番成長できると思って決めました」と、振り返る。 

 

夢だったプロの世界に足を踏み入れ、初めは苦労しながらも徐々にスピードや強度に慣れていっていた。

 

プロ2年目となる’21年の3月、彼に左膝の前十字靭帯損傷という試練が訪れた。

 

「正直きつかったですね。それまで大怪我をしたことがなかったので、半年もプレーできないのかと落ち込みました。でも、どうしようもできないので、この半年をどう過ごすかを考えるようになって。食事を見直したり、体づくりのために筋トレを強化したり、今思えばいい時間だったと思います」。

 

昨季は、アルベル監督のスタイルにフィットし、ハイレベルなポジション争いの中で30試合に出場。自身でも手応えを感じていたところで、アビスパ福岡への移籍を決意した。

 

「東京からも延長オファーがあったので悩んだんですけど、アビスパがシーズン終わって次の日くらいにオファーを出してくれて。柳田強化部長の熱意もすごく伝わって、本当に必要としてくれていると感じたので、移籍を決めました」。

 

少しでも長く、楽しくサッカーをしていたい。

 

「やっぱり、少しでも長くサッカー選手としてプレーしたいです。35歳までベストコンディションでプレーできたら最高ですね。あとは、攻撃の中心となって、コイツに預けとけば安心だなって思ってもらえる選手になりたいです」。

 

紺野和也というサッカー選手がピッチで輝き続けることを一番強く願っているのは、彼の父親かもしれない。 

 

「今でも毎試合後LINEが来て、『もっと中に入って行った方がいいんじゃないか』『シュート弱くないか』とかアドバイスしてきます。もうわかったから…って感じなんですけど(苦笑)」。

 

右サイドを駆け抜ける小さな巨人は、チームに新たな濃紺旋風を巻き起こすだろう。

プライベートに迫るQ&A

Q.今1番ハマっていることは?

A.抹茶が好きなので、オフの日は抹茶のスウィーツとか置いてあるカフェによく行きます。福岡でも自分で調べて3軒くらい行って、テリーヌとか、有名なパンケーキとか食べました。結構甘党です!

 

Q. 福岡の印象は?

A. めっちゃ住みやすいですね。これまで東京にいて狭くて人が多いことに慣れていたので、福岡はゆったりしてるな~って。美味しいご飯も多くて、来てすぐ好きになりました。

〈PROFILE〉

紺野和也

ミッドフィルダー 背番号8

生年月日 1997年7月11日

身長161㎝ 体重59㎏

出身地 埼玉県

武南高校を卒業後、’16年に法政大学へ進学。’18年に全日本大学サッカー選手権大会で優勝し、ベストMF賞を受賞。その翌年にはユニバーシアード日本代表としてナポリ大会に出場した。’19年2月に来季からのFC東京への加入が内定し、同年3月に特別指定選手に承認された。そして’22年、アビスパ福岡へ完全移籍を果たす

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