【福岡ラーメン物語 のぼせもん。|73杯目 めんくいや】
「福岡の人にも福岡に来る人にも皆さんに愛されて喜んで貰いたいです」
どこで生まれてどう育ち、どう生きていくのか。人に歴史があるように、ラーメンにも歴史がある。久留米で生まれたラーメンが山口で育ち、福岡で愛されて40年以上。この一杯には歴史が詰まっている。
めんくいや薬院本店
店長 山羽 泰智 (Yamahao Yasutomo)
1998年、福岡市生まれ。高校卒業後、調理師専門学校を経て、20歳の時に家業である『めんくいや』に入りラーメンの世界へ。2023年より本店の運営全般を任される。
薬院に本店を構える『めんくいや』は1980年の創業と、福岡市内でも長い歴史を持つ店だ。創業者は久留米の人気店でラーメンを学び、山口県宇部市で独立開業。その後、福岡で屋号もスタイルも改めて、二代目が『麺喰舎(めんくいや)』として新たなスタートを切った。
「開業当初は売り上げがまったくなくて、どうしたら福岡の人に愛される店になるだろうと考えました。当時福岡にはラーメン居酒屋があまりなかったので、屋台のようにお酒を飲んでラーメンで締められる店にリニューアルしました」。
店主の山羽和幸さんは、親を支えるためにラーメンの世界に入った。創業時代からの味は受け継ぎながらも、材料や製法などの改良も重ねていった。さらに皆が懐かしさを覚えるようにと、店内を「学校の教室」をイメージして親しみやすくした。
山羽さんが目指したラーメンは、あっさりしていながらも旨味をしっかりと蓄えた、毎日でも食べられる日常に寄り添った味。それは子供の頃から毎日ラーメンを食べてきた山羽さんならではの想いからだ。
「スープも麺も具もすべて、手作りで安心安全なものをご提供する。それが先代からのこだわりなんです。麺も自家製なのですが、添加物は極力使わず、保存料も一切使わずに作っています」。
頭骨とゲンコツを丁寧に炊き出した臭みのないスープに、しなやかで歯切れのある自家製細ストレート麺。老若男女幅広い人たちに食べて欲しいと生まれたラーメンは、4年以上に渡り愛され続けている。
歴史を重ねていくには時代に合わせた変化や進化も不可欠だ。長年愛され続けている味を受け継ぎ、新たな歴史を紡ぎ始めているのが、三代目の山羽泰智さん。高校卒業後に調理師学校で料理を学び、20歳から本店に入りラーメンの世界へ飛び込んだ。15年の経験を積んで2023年から全面的に本店のすべてを任されるようになった。
「調理師学校で習ったのと違い、ラーメン店の仕込みは大量なので、慣れるまでは苦労しました。そしてこれからは調理や接客だけではなく、マネージメントや経営も携わっていかねばなりません。これまでの歴史に恥じないお店にしていかなければと思っています」。
店舗も全面改装して今まで以上に明るい雰囲気になった。泰智さんのアイディアによる一品メニューなど、長年愛されている店に新たな魅力が増えつつある。
「地元福岡の方はもちろん観光客に方やどんな方にでも喜んで頂ける店だと自負しています。ラーメンで福岡の力になりたい。これからも福岡でずっと愛される店であり続けたいと思っています。そしてまだ知らない方には、天神や博多から歩けるところに安くて美味しい店があるよと、声を大にして伝えたいですね」。
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●取材を終えて
自分の未熟さを痛感した豚骨ラーメン店
私が『めんくいや』の存在を初めて知ったのは、恥ずかしながら青森のラーメン施設に『めんくいや』が出店した頃のことでした。薬院や博多にお店があるにも関わらず、路地裏にあった存在を見落としていたのです。そして初めて薬院の本店でラーメンを食べた時に、なぜこのラーメンを今まで知らなかったのだろうと反省しました。福岡には全国に知られる人気のラーメン店が数多くありますが、それらの店よりも長い歴史を持っていることもその時に知りました。長年福岡のラーメンを食べ歩いて、知り尽くしていると自負していましたが、福岡には私がまだまだ知らない店があるということを改めて学ばせて頂いたお店です。
【ラーメン評論家 山路力也】
テレビ・雑誌・ウェブなど様々な媒体で情報発信するかたわら、ラーメン店のプロデュースなど、その活動は多岐にわたる。「福岡ラーメン通信」でも情報発信中
めんくいや 薬院本店
【所】福岡市中央区渡辺通2-3-27 待鳥ビル1階
【☎】092-712-9551
【営】11:00~OS24:00(土曜、日祝日~OS23:00)
【休】なし
【席】32席
【P】あり(2台)
【カード】不可