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【福岡ラーメン物語 のぼせもん。|68杯目 屋台おかもと】

「とにかく一生懸命に作っているだけです。これだけは誰にも負けない自信があります」

福岡の屋台はラーメンだけと思ったら大間違い。炭火で焼き上げた和牛も、本格的な中華料理の数々も食べられて、そしてもちろん締めのラーメンも本気で美味しい。そんな屋台を知っている人生はなんて幸せなのだろう。

 

屋台おかもと

店主 吉村 大輔(Yoshimura Daisuke)

1963年、東京都生まれ。20歳で『山庄』に入り中華を学ぶ。『ともちゃん』で屋台の修業を経て、1994年に独立し『屋台おかもと』を開業。2009年中洲に店舗を構え、2021年に川端商店街へ移転する。

 

福岡のラーメンを語る上で、屋台の存在は欠かせない。戦後に生まれた福岡の屋台は、最盛期には400軒以上もの屋台が軒を連ねた。現在は中洲エリア、天神エリアを中心におよそ100軒。福岡ならではのラーメンはもちろん、おでんや串焼き、中にはフレンチやバーなどの個性的な屋台もあり賑わいをみせている。

天神南の渡辺通沿いで行列を作る『屋台おかもと』は、30年近くにわたり愛されている人気の屋台。岡本さんが店主かと思いきや、店主の名前は吉村さんだ。

「独立して自分の屋台を持つという時に、もう辞められる方の屋台を引き継いだんです。その岡本さんというご夫婦がとても良い方たちで、お名前を残したいなと思って屋号はそのままにしました」。

脱サラ後20歳の時に中華料理店で飲食の世界に入った吉村大輔さんは、店を持つよりも屋台であればすぐに独立出来るだろうと考えた。6年間中華の勉強をした後に、屋台のノウハウを学ぼうと人気の屋台に修業で入った。しかし屋台の世界はそう甘くはなかった。

「中華の経験もありましたし、1年くらいで独立出来ると思っていたのですがとんでもなかったですね。町中華では調理だけしていれば良かったのですが、屋台では調理だけではなくお客様ともコミュニケーションを取らなければなりません。あれもこれも出来るようになるまでに5年もかかりました」。

『牛さがりの炭焼き』(1200円)/肉料理にも定評がある『屋台おかもと』。人気の牛炭火焼で使う肉は九州産黒毛和牛に限る。美味しいものを出したいという採算度外視のメニューだ。

31歳の時に白金に屋台を構えて独立。その後、取締りが厳しくなり移転を繰り返し、現在の渡辺通にたどり着いた。その後、15年を経て中洲に店舗を構えた。生ものをはじめ屋台ではどうしても出せない料理を食べて欲しいという思いから。自慢の中華料理も豊富に揃い、炭火で炙る肉も九州産の黒毛和牛を使う。

『ラーメン』(650円)/豚頭骨と背骨を8時間煮込んだスープは、丁寧に下処理をしているので臭みが全くなくまろやかな仕上がり。醤油ダレのキレと香りが食欲を喚起する、豚骨の旨みをストレートに味わえる一杯

飲み屋ではなく料理屋という矜持。だから料理には一切手を抜かない。それはラーメンでも同じこと。豚頭と背ガラだけを8時間炊いたスーブは臭みが一切なく、豚骨の奥深い旨味にあふれている正統派の豚骨ラーメン。しかしこのラーメンが出来るまでには紆余曲折があった。

「屋台時代にラーメンの作り方は教わったのですが、ニンニクなどは使わずに豚骨だけの味のスープを出したいと思ったんです。なので最初は油も足さず化学調味料も使わずにラーメンを作っていたのですが、お客様に「おいしくない」と叱られて目が覚めました。自己満足の物を出していては客商売としていけないのだと気づかされましたね」。

試行錯誤の末に生まれた醤油ダレは、チャーシューを煮た醤油をベースに旨みを濃縮させていく

美味しい料理にこだわるだけではなく、いかにお客様に満足して貰えるか。屋台はもちろん店舗でもどう楽しく過ごして貰えるか。独立して30年近く経った今も吉村さんは考え続けている。

「私たちが出来ることは、手を抜かずに一生懸命考えて、真面目に料理を作り接客をするだけ。その点だけは誰にも負けない自信があります。あとはそれをお客様にどう感じて頂けるかだと思っています。帰り際に笑顔で「美味しかった」「楽しかった」と言って頂けるのなら何よりも嬉しいですね」。

 

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●取材を終えて

屋台のイメージが変わった店

私が初めて『屋台おかもと』のラーメンを食べたのは10年近く前になるのですが、正直「屋台のラーメン」なんて大したことないだろうと思って食べたら、実店舗顔負けの本格的な味わいに驚きました。そしてラーメンのみならず肉がまたとても美味しくてまたビックリ。 中華のメニューも専門店顔負けの品揃えでどれも美味しい。それまでの僕の屋台のイメージが覆された瞬間でした。取材の時はいつしか時間も忘れて吉村さんと話が盛り上がってしまいました。ラーメンやうどんに比べて博多ちゃんぽんは日の目を浴びていないのではないか。 またお店にお邪魔して吉村さんと“博多ちゃんぽん談義”の続きをしたいと思っています。

【ラーメン評論家 山路力也】
テレビ・雑誌・ウェブなど様々な媒体で情報発信するかたわら、ラーメン店のプロデュースなど、その活動は多岐にわたる。「福岡ラーメン通信」でも情報発信中

 

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掲載の内容は取材時のものです。取材日と記事公開日は異なる場合があり、メニューや価格、営業時間、定休日など取材時と異なる場合がありますので、事前に公式HPやお問い合わせにてご確認をお願いします。

屋台おかもと

【所】福岡市博多区上川端9-154
【☎】092-263-0566
【営】18:00~翌3:00
【休】なし
【席】45席
【P】なし
【カード】不可

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