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【福岡ラーメン物語 のぼせもん|60杯目 FREE-MEN】

「今までにはない新しい豚骨ラーメン。それを自分の手で表現していきたい」

豚骨ラーメン以外のラーメンが増え続けている福岡の地で、敢えて豚骨ラーメンで新たに勝負を挑む男がいる。それが豚骨一筋、24年走り続けてきた男のプライド。豚骨こそ最強のラーメンなのだ。

 

FREE-MEN

河原慎治(Shinji Kawahara)

1978年、福岡県福岡市生まれ。大学卒業後、営業職を経て『博多一風堂』に入り数々の国内店舗を手がける。2010年には「暖簾分け店主」の一期生となり、東京と熊本で店舗運営。 2021年独立し『FREE-MEN』を創業。

 

近年、福岡のラーメンシーンでは「非豚骨」「脱豚骨」の流れが加速化している。ついに一年間にオープンする新店のうち、非豚骨店の数が豚骨店を越えた。今や、福岡は豚骨以外の様々なラーメンが食べられる場所になったのだ。

筑紫野市紫。天神から西鉄で30分程の場所に出来た『FREE-MEN』は、一見お洒落なカフェのような佇まい。店内に入れば明るくウッディな雰囲気が心地よい。しかし厨房には大きな寸胴が鎮座しており、さらに製麺機も見える。

「麺もスープも全て自分の手でやりたかったんです。ここは僕の地元でもあるんですが、街中から離れた場所でもラーメンの味で呼べるようにしたかったので、ここに店を構えることにしました」。

大きな寸胴で取ったスープは注文を受けるたびに雪平鍋で熱して熱々に

店主の河原慎治さんは大学の体育学部へ進学し、バレーボールに明け暮れた。大学卒業後は実業団に進むか体育教師になるか。しかし身長が低くバレーボールに限界を感じた河原さんが、新たな人生として選んだのが、アルバイトで出会ったラーメンの世界だった。

「学生時代に『一風堂』の大名本店で週6日ほどアルバイトしていたんです。そこで出会ったスタッフの皆さんが仕事に燃える熱い人たちばかりで、僕もこういう場所で働きたいと『一風堂』に就職したかったのですが、親から反対をされてしまい営業職に就くことにしました」。

店内の製麺室で毎日作られる極細ストレート麺はサクサクとした食感が心地よい

自分の夢と親の期待の間で、河原さんは親の思いに従った。しかしラーメンへの思いは捨てきれず、2年間サラリーマンを勤め上げ、役職がつくタイミングで会社を辞めて『一風堂』へアルバイトとして戻った。その後、社員になって関東を中心に数々の支店の店長として活躍。さらに「暖簾分け店主」一期生として、会社から独立して店舗を任された。

豚肩ロースを低温でローストしたチャーシューはほのかな燻香が食欲を刺激する

東京や熊本に『一風堂』の店舗を複数構え、本社から独立した形で運営していた河原さん。しかしいつしか「自分の味」で勝負したいという思いが湧き出してきた。

「『一風堂』の暖簾分けを経験させて頂いたおかげで、ほんの少しですが『経営者目線』でお店を見ることが出来るようになりました。しかし創業者の河原成美さんは『一風堂』をゼロから作り上げた。僕も成美さんのように自分の作った味で勝負する『創業者目線』を持ちたいと思ったんです」。

長年作り続けてきた『一風堂』のラーメンから、オリジナルのラーメンへ。もちろんやるならば豚骨ラーメンと決めていた。

「やはり福岡は豚骨ラーメンが愛されている場所。先輩たちが作っていない、新しい豚骨ラーメンを自分の手で表現したいと思いました」。

『チャーシューメン』(900円)/豚の頭骨とゲンコツをじっくり丁寧に炊き出したスープは、臭みが全くなく骨感にあふれる味わい。今までありそうで無かった、新たな福岡の豚骨ラーメンの誕生だ

塩気や油分に頼らず、豚骨本来の旨味を追求する。そこには京都出身の母親から教わった「出汁文化」の影響もある。若者たちに素材の旨味を感じられる味覚を持って欲しいという願いもある。

「90歳のお客様がスーブを飲み干して下さったのが嬉しくて。僕もいつまでも現場に立ってラーメンを作り続けていたいと思っています」。

『ラーメン』(700円)/老若男女が美味しいと感じる豚骨ラーメンを目指して、店主が30年のキャリアを注ぎ込んだ渾身の一杯。豚骨の出汁感が強いスープは飲み干す客も続出しているほどだ

 

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●取材を終えて

豚骨ラーメンの新たな可能性

私が河原さんと出会ってからもう二十年近くになります。『一風堂』の店長として「暖簾分け」の店主として、ラーメンについて熱く私に語っていた若き河原さんは、目の前にあることを良しとせず、常に一歩上を見据えていた人でした。出尽くした感のある福岡の豚骨ラーメンの中で、敢えて豚骨で勝負したのは彼のプライドでしょう。そしてそのラーメンは驚きの完成度でした。出尽くしたなんてとんでもない。まだまだ豚骨ラーメンには可能性がある。 河原さんのラーメンから勇気と希望を貰いました。慎治!オープンおめでとう!お店が落ち着いたらまたゆっくりとサシで熱いラーメン談義しようぜ!

【ラーメン評論家 山路力也】
テレビ・雑誌・ウェブなど様々な媒体で情報発信するかたわら、ラーメン店のプロデュースなど、その活動は多岐にわたる。「福岡ラーメン通信」でも情報発信中

 

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掲載の内容は取材時のものです。取材日と記事公開日は異なる場合があり、メニューや価格、営業時間、定休日など取材時と異なる場合がありますので、事前に公式HPやお問い合わせにてご確認をお願いします。

 

FREE-MEN

【所】筑紫野市紫1-28-3
【☎】092-924-6567
【営】11:00~22:00
【休】水曜
【席】24席
【P】あり
カード/不可

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