【ふくおかアグリライフ】大地のチカラ「博多なす」
『ふくおかアグリライフ』では福岡の農業にフォーカス。
農作物の現場をフカボリする【大地のチカラ】。
今月はまろやかな口当たりで料理を選ばない『博多なす』をピックアップしてお届けします!
福岡は、もともと日本でも有数のナスの栽培産地。
『博多なす』は長いボディと濃い紫紺色。
あくが少なく、まろやかな口あたりでどんな料理にもよく合う万能食材です。
みやま市の農家、阿部政和さんが作っているのは『博多なす』の一種『PC筑陽』という品種。
通常のナスは花粉受粉やホルモン処理など、実をつけるための作業が必要だ。
しかも栽培作業全体の30%を占めるほどの手間と時間を取られる。
この労力削減を目指し、受粉なしで単体着果できるように開発されたのがこの『PC筑陽』だ。
その他にも、ヘタや茎葉にトゲがなく実を傷めることがないので、栽培時や輸送時の取り扱いが楽という特徴も持つ。
皮も実も柔らかく、焼きナスや麻婆ナス、浅漬けなど幅広い調理に合う良質な肉質も人気の理由だ。
阿部さんはこのナスを家族4人、900坪のハウス栽培で年間に約5トン出荷している。
県内4位のナスの収穫量であるみやま市では平均的な量だという。
阿部さんは若いときに大病を患い、毎日の食事の大切さを痛感したそうだ。
以来、出荷量よりも一本一本の味と質が良くなるよう丁寧に育てることを心掛けている。
たしかに阿部さんの畑は今まで取材した中で過去一のきれいさ。
圃場に無駄なものが無く整理整頓が行き届いている。
阿部さんのこだわりは他にもある。
畑にはナスを喰い荒らす、アザミウマやコナジラミなどを捕食するダ二を撒いて、 害虫駆除を行なっている。
それにより薬剤の散布が最小限にできるそうだ。
また圃場の空調・湿度・CO2濃度はすべて「あぐりログ」というモニタリングシステムをつかって管理している。
データはすべて手元のスマートフォンでいつでもどこでも簡単に確認できる。
より良い野菜作りに役に立つものであれば積極的にICTも取り入れている。
有機とデジタルへの取り組み方が、今後の農家のライフスタイルを大きく左右するそうだ。
就農して25年、みやま市で農業の時勢をつぶさに見てきた阿部さん。
これからはもっと若い世代が農業を始めやすい環境を作り上げていきたいそうだ。
それがこれまで自分たちを育ててくれた先輩たちへの恩返しでもあるという。
これからの活動に注目していきたい。
今月のチカラ人
阿部 政和(あべ まさかず)さん
1975年生まれ。 就農26年目。 高校卒業後、 福岡県農業大学校で学んだあと生花店へ就職。 大病を患い、一時入院生活を余儀なくされる。 回復後、 リハビリを兼ねて実家の農業を手伝う中、 親しくなった青年部会のメンバーに口説かれ就農。 以来ナス一筋で、現在は瀬高なす部会の組織部長を務めている。