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【福岡ラーメン物語 のぼせもん|78杯目
福間ラーメン ろくでなし】

「豚骨ラーメンの香りが好きなんです。記憶に残る香りと味を作りたいです」

豚骨ラーメンには独特の香りがある。あの香りが身体に染み付いているのが福岡人。福岡で生まれ東京でラーメンを学んだ店主が、地元で作ったラーメンはやっぱりクサイ豚骨ラーメンだった。

『こってりラーメン』(750円)/丁寧に下処理した豚豚骨を長時間炊き上げ、さらにゲンコツと背脂を加えて熟成させたスープは、食べ進めるほどにクセになるインパクトある味わい

 

福岡ラーメン ろくでなし

店主 中村 誠(Nakamura Makoto)

1979年、福岡県福津市生まれ。大学生の時に「でび(でびっと)」の立ち上げに参画。卒業後も店舗立ち上げやマネージャーに従事。2013年に『ろくでなし』を創業。

 

豚骨ラーメンには独特の香りがあるが、実はあの香りを出すのはなかなか難しい。火加減や温度などを考えながら、ベストの状態で発酵熟成させることで、はじめて豚骨ラーメン独特の香りが出る。ただ骨を炊いただけではなく、あの香りは意図的に出しているのだ。

「クサい豚骨ラーメンを作りたくて挑戦したのですが、豚骨を臭くするのって結構難しいんですよ。臭いを安定させるのに半年ほどかかりました。でもそれが逆に面白くてすっかりハマってしまいましたね」。

店主の中村誠さんは地元福津市で生まれ育った生粋の福岡人。大学進学で東京に行き、アルバイトでラーメン店に入ったことがラーメンの世界への入り口だった。

「子供の頃からラーメンは好きでしたが、最初は自分がラーメン屋をやるとは思ってもいなかったです。アルバイトで2年お世話になって、ラーメン屋は楽しいと思って大学卒業後そのまま就職しました」。

店舗展開の要として立ち上げやマネージャーなどを歴任し、33歳の時に独立を決意し福岡へ戻った。

あっさりとこってり、2種類の豚骨ラーメンは、豚頭だけを使って熟成させないスープと、ゲンコツなどを足して熟成させたスープから生まれる

地元福岡でラーメン屋をやるのならば、やはり自分も幼い頃から慣れ親しんだクサい豚骨ラーメンで勝負したい。試行錯誤の日々は続いた。

「豚骨の経験はあったのですが、どうしても臭いが出なかったんです。ネットを調べても作り方は出てこないので、自分で何度も試しながらスープを継ぎ足していくスタイルにたどり着いて、ようやく臭いが出せるようになりました」。

しっかりとスープを濾すことで滑らかな口あたりを表現

スープを作っては一部を残して捨てて継ぎ足し、また新しいスープを作って足すことを繰り返す。丁寧に下処理した豚頭骨を長時間炊き上げたスープをベースに、ゲンコツと背脂を加えて味に深みを与えた。完成するまでに半年がかかった。

久留米の『福久留製麺』製の麺をメニューによって使い分ける

独立開業して早10年。着実に一歩ずつ営業を重ね、今では福津には欠かせない地域密着の人気店となり、市外にも支店を展開して3店舗に増えた。ラーメンもあっさり、こってりと2種類の豚骨ラーメンを揃え、豚骨以外のラーメンなども提供する。本店では夕方以降のメニューに焼鳥や一品料理も並び、ラーメンだけではなく居酒屋としても使うことが出来る。

「僕自身もラーメン居酒屋や屋台のようなお店が好きなので、地元の方たちに色んな使い方をして頂けるお店が良いなと。あの店はいつでも行けるね、いつでもやっているねという安心感のある店でありたいと思っています」。

「ラーメン作りは奥が深くて終わりがありません。クサい豚骨ラーメンを作るのがこんなに難しいとは思いませんでしたが、難しいからこそやりがいになってすっかりハマってしまいました」

中村さんが東京でラーメンと出会ってから四半世紀、地元福岡で独立開業して10年の月日が経った。これから先の10年は攻めの10年。中村さんはさらに多くの人に自分のラーメンを食べて欲しいと考えている。

「これまではロードサイドで地元の人に愛される地域密着のお店作りをしてきましたが、より多くの人に知って頂くためにも、いずれは福岡市など街中への出店も出来たら良いなと思っています。また豚骨以外のラーメンで勝負する、セカンドブランドの店もいつかやってみたいですね」。

『背脂ラーメン』(850円)/ライトな呼び戻し豚骨スープにたっぷりの背脂をふりかけた新メニュー

 

 

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●取材を終えて

経験豊富なベテラン職人の革新的なラーメン

店主の中村さんはタレントのデビット伊東さんが営む『でびっと』出身。当時ラーメンブームの寵児として様々なラーメンを生み出し、店舗展開も積極的な人気店での経験はとても貴重だったことは想像に難くありません。東京をはじめ全国のラーメン事情も熟知し、豚骨以外の多くの引き出しを持っている中村さんだからこそ、限定ラーメンなどのクオリティも非常に完成度が高く、その創作意欲は止まることがないでしょう。「伝統と革新」が『ろくでなし』のラーメンのテーマだそうですが、個人的には中村さんが生み出す「革新」の部分をもっと見てみたい。中村さんが作る驚くような新しいラーメンが食べられる日を楽しみにしています。

【ラーメン評論家 山路力也】
テレビ・雑誌・ウェブなど様々な媒体で情報発信するかたわら、ラーメン店のプロデュースなど、その活動は多岐にわたる。「福岡ラーメン通信」でも情報発信中

 

 

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掲載の内容は取材時のものです。取材日と記事公開日は異なる場合があり、メニューや価格、営業時間、定休日など取材時と異なる場合がありますので、事前に公式HPやお問い合わせにてご確認をお願いします。

福間ラーメン ろくでなし 福津本店

【所】福津市中央4-22-30
【☎】0940-36-9525
【営】11:00~24:00(金・土曜、祝前日~翌2:00、日祝日~24:00)※OS各10分前
【休】なし
【席】36席
【P】あり(3台)
カード/可、QRコード決済可

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