【福岡ラーメン物語 のぼせもん|80杯目
ぎょらん亭 本店】
「百周年を目指して大切な暖簾と味をこれからもずっと守り続けていきます」
守り続けていくだけが伝統ではない。 時には攻めることも必要だ。常に時代に抗い挑戦し続けてきた歴史があるのならば、攻め続ける姿勢こそが伝統を受け継いでいくということなのだ。
個性豊かな豚骨ラーメン店が数多く存在する北九州市。福岡市や久留米とはまた違った独 特な豚骨文化が根付くエリアで、 長く愛されている店がある。
ぎょん亭 本店 店長
梅本学 Umemoto Manabu
1983年岡県北九州市生なまれ、ラーメン店や居酒屋などでの経験を経て、2019年より 「ぎょらん亭」へ。 本店の店長として厨房に立ちつつ、 支店や系列店も統括する。
創業は1946(昭和21)年。料亭 「魚藍亭」をルーツに持つ「ぎょらん亭」は、北九州を代表する老舗豚骨 ラーメン店。濃厚でありながら臭みのない豚骨スープが人気を集め、県 内外に多くのファンを持つ。さらに これまでに多くの人気店を輩出するなど、長年北九州の豚骨ラーメンシーンを牽引して来た老舗だ。
料亭の次男坊として生まれた創業者は、和食の技法なども用いなが ら豚骨なのにクセや雑味がない、国産ゲンコツ100%の豚骨スープ を完成させて、看板メニューの「十割ラーメン」を創作した。さらに鶏 ガラスープと豚骨をブレンドした 「二八ラーメン」や、圧力釜で濃度を詰めた「どろラーメン」など、多くのオリジナルラーメンを生み出してきた。唯一無二をテーマに、他のラー メン店がやらなかったことに挑戦し続ける。それこそが「ぎょらん亭」が長年愛され続けている理由だ。
個人経営のラーメン店や飲食店にとって、事業継承の問題は深刻だ。 後継者不在によって惜しまれつつ閉店を余儀なくされる店が少なくない中、「ぎょらん亭」は地元北九州で飲食店を展開する企業がバトンを受け継いだ。オーナー自身も学生時代から好きで通っていた店を無くしてはいけない。 北九州で愛されている味を後世に継承していかなければならない。そんな思いから伝統の暖簾と味を受け継いだ。
「それはもう物凄いプレッシャーしかないですよ。地元の人がずっと愛してきたお店と味ですから。それをまずしっかりと守り続けていくことが、僕に課せられた最初の使命だと思いました」。
店長の梅本学さんは創業者のラーメンにかける思いと製法を今も忠実に守って、毎日厨房に立ってラーメンを作り続けている。
「やはり料亭の方が作ったラーメンですから、豚骨なのにクセやしつこさがなく洗練されているんです。それこそが「ぎょらん亭」の唯一無二の味だと思っています」。
豚骨と水以外の余計なものは一切入れず、ただひたすらに炊き続けたスープは豚骨の旨味だけがあふれ雑味が一切ない。そうかと思えば鶏ガラスープとブレンドして「二八ラーメン」を開発するなど、固定観念にとらわれることなく自由な発想で、様々なラーメンを生み出してきたのが創業者だった。
常に時代の一歩先を見つめていた創業者に負けないよう、「ぎょらん亭」らしい新作ラーメンを作りたい。創業者が生み出した「どろラーメン」を超える一杯を目指して誕生したのが豚骨を突き詰めた「どろどろラーメン」だ。 「「ぎょらん亭」らしさとは何かを考えた時に、濃厚でありながら洗練された豚骨の味わいを表現することこそ、私たち暖簾を受け継ぐ者が目指すべき姿なのだろうと思いました。90年、100年と歴史が続くようにしっかりと暖簾と味を守り続けていきたいです」。
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●取材を終えて
【老舗なのに常に攻め続ける孤高のラーメン店】
事業継承が難しい今の時代、経営が変わることで効率化が図られたり味が変わってしまったりすることが多い中で、「ぎょらん亭」を受け継いだ新しいチームが、 愚直に昔ながらの製法を忠実に守り続けているのは素晴らしいことだと思います。 ラーメン店に限らず老舗の飲食店はそれまで愛された味を守り続けなければならない宿命がありますが、 「ぎょらん亭」は長年愛されてきた味はしっかりと守りながらも、 新たなラーメンの創作も行っています。 それも「ぎょらん亭」は創業者の時代から常に新しいことに挑み続ける存在だったからこそ。 味だけではなく思いもしっかりと受け継いでいるのです。 創業77周年おめでとうございます!
ラーメン評論家
山路力也 Rikiya Yamaji
テレビ・雑誌・ウェブなど様々な媒体で情報発信するかたわら、ラーメン店のプロデュースなど、その活動は多岐にわたる。「福岡ラーメン通信」 (Fukuoka-ramen.themedia.jp)でも情報発信中
掲載の内容は取材時のものです。取材日と記事公開日は異なる場合があり、メニューや価格、営業時間、定休日など取材時と異なる場合がありますので、事前に公式HPやお問い合わせにてご確認をお願いします。
ぎょらん亭 本店
【所】北九州市小倉北区三郎丸3-6-29
【☎】093-922-4778
【営】11:00-15:15/17:00-19:45
(土・日曜 11:00~19:45)
【休】なし
【席】30席
【P】あり カード/不可