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【福岡ラーメン物語 のぼせもん|81杯目
ケンボーラーメン】

「楽しみながらラーメンを作りたい 自分が楽しめなければ 良い物は出来ません」

新たなことを始めるのに年齢は関係ない。様々な経験を経たからこそ生み出せることもある。子供の頃から大好きだったラーメンを作りたい。齢四十九からの新たな挑戦が始まった。

「トンコツラーメン」(680円) 骨のみを半日かけて 丁寧に炊いた臭みのない豚骨スープに、オリジナルの低加水細ストレート麺。甘辛く煮込まれたバラ肉チャーシューも味 わい深い、老若男女に愛される博多ラーメンの良作だ

 

 

ケンボーラーメン 店主

山本健司 Yamamoto Kenji

1972年福岡県福岡市生まれ。九州産業大学デザイン科を卒業後、様々な職を経てラーメンの世界へ。2004年「ラーメンTAIZO」創業から参画し、2021年に独立開業

 


 

福岡市早良区野芥。長閑な住宅がとして知られるこの町に、一風変わったラーメン店がオープンした。 店の前にはバイクが置かれ、店内にも工具や看板などが飾られていてまるでガレージのような空間。しかしながらここは歴とした豚骨ラーメンを出す店なのだ。

「まさにガレッジが欲しかったんですよ。ガレージって男にとって夢の空間じゃないですか。せっかく独立して自分の店を始めるなら、自分が楽しくなる空間でラーメンを作りたいと思ったんです」

 

店主の山本健司さんは福岡で生まれ育った。地元の大学のデザイン科を卒業し建設会社へ就職。その後、様々な職に就いたのが、33歳の時にラーメンの世界へと足を踏み入れることとなる。

「オートバイが共通の趣味だった和食の料理人の方と意気投合し、 一緒に「ラーメンで一旗揚げようや」という流れになって。僕がアルバイトで得ていたラーメンの知識と、その方 の和食の技術でオリジナルのラーメンを完成させて、ラーメン店を立ち上げることになりました。

「BLACKラーメン」(780円)/クリーミーな豚骨スープの上にオリジナルの焦がしニンニク油を浮かべた香ばしい味わいの一杯。

店の名前は「ラーメンTAIZO」タイリッシュにアップデートされた博多ラーメンで人気を博した店だったが、20年に惜しまれつつ閉店。山本さんは創業から17年勤め上げた店から独立することとなった。

「ギョーザ (10ケ)」 (500円) / 餃子ももちろん手作り。 手作りの餡を手包みした店主自慢の一品奇しくもコロナ禍の中での独立。物件を探すこと9カ月。ついに野芥で物件を見つけた。ガレージのような空間で出すのはもちろん豚骨ラーメン。自身の愛称である「ケンボー」を店名に掲げた。

 

スープは豚頭骨のみを使用して13時間ほど丁寧に炊き上げたもの。低加水のストレート細麺は地元の製麺所にレシピを投げた特注麺。博多ラーメンのスタイルを踏襲しつつもオリジナリティがある一杯だ。

滑らかでクリーミーな口あたりの豚骨スープは、 臭みもしつこさもないが奥深いコクがある。自分の出来ることは全て手作りで提供するのが山本さんの信条だ。

 

食感が楽しいストレート細麺は、明治43年創業の老舗「青木食産」にオーダーした特注麺を使用する

「このラーメンのベースとなっているのは、やはりTAIZO時代の味です。残念ながら立ち退きがあってTAIZOは無くなってしまったのですが、自分たちが作って多くの人に愛されたラーメンを、これからはこの場所で継承して、提供し続けていきたいと思いました」


■独立への想い

49歳での独立開業は一般的には遅いスタートと思われるかも知れない。しかしながら山本さんの店とラーメンには、これまでの人生が集約された説得力がある。

 

「この歳で始めるのですから楽しく仕事がしたいじゃないですか。自分が楽しくなければ良い物は生まれない気がするんですよ。今毎日がすごく楽しいです」。

 

豚骨ラーメン以外の色々なラーメンが増えてきた福岡で、敢えて自分が好きなシンプルでスタンダードな博多ラーメンで勝負したい。

土地勘のない野芥という場所でコロナ禍中にオープンして、しかも50歳という年齢でのチャレンジ。ここから先はもう上に上がっていくしかないですよね。毎日が充実していてとても楽しいです」

全てを自分の手で手作りのものをお客さんに提供したい。全てを自分の手で手作りのものをお客様に提供したい。山本さんの思いは地元の人たちにも伝わり、早くも老若男女多くの人がリピートする人気店となっている。

 

「多くの方に喜んで頂いて、自分が17年間やってきたことは間違えっていなかったのだなと。これからも自分が出来ることを一所懸命、身体が動く限り続けていきたいと思っています」。

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・取材を終えて

名店のDNAと人気店の味を受け継ぐラーメン

初めて山本さんのラーメンを食べた時、記憶に引っ掛かる味がありました。 その後 「ラーメン TAIZO」を立ち上げた方だと知り、TAIZOを初めて食べた時の舌の記憶が鮮明に蘇ってきました。さらに山本さんはラーメン作りの基礎を「博多一風堂 塩 原本舗」で学ばれたと聞き合点がいきました。一風堂のDNAとTAIZOの味を受け継ぐ山本さんのラーメンは、老舗などのノスタルジックな博多ラーメンではなく、 進化したプログレッシブな博多ラーメンの潮流をしっかりと受け継いでいたのです。 非豚骨、脱豚骨が叫ばれて久しい福岡のラーメンシーンにおいてなんと心強いことか。これからもどうぞ無理をせず美味しいラーメンを作り続けていって下さいね。

ラーメン評論家

山路力也 Rikiya Yamaji

テレビ・雑誌・ウェブなど様々な媒体で情報発信するかたわら、ラーメン店のプロデュースなど、 その活動は多岐にわたる。「福岡ラーメン通信」でも情報発信中

 


掲載の内容は取材時のものです。取材日と記事公開日は異なる場合があり、メニューや価格、営業時間、定休日など取材時と異なる場合がありますので、事前に公式HPやお問い合わせにてご確認をお願いします。

ケンボーラーメン

【所】福岡市早良区重留6-17-27
【☎】092-804-8414
【営】11:00-20:00
【休】月曜
【席】16席
【P】あり カード/不可

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