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【福岡ラーメン物語 のぼせもん|53杯目 らぁめん 39番地

「今でも毎日試行錯誤 の繰り返しです。
もっと美味しいラーメン になるように。」

やりたいことがあるわけでもなくフラフラしていた男が、たまたま出会ったのがラーメンだった。作り方も知らなかったラーメンと真剣に向き合い続けて20年。今では立派なラーメン屋のオヤジ。ラーメンは人生を変える。

「らぁめん」 (550円) / 豚の頭骨、豚足に鶏ガラを入れて炊き上げたスープは臭みがなくマイルドな味わい。

らぁめん39番地 店主

渡邊賢司 / Kenji Watanabe

1967年、 福岡県福岡市生まれ。 35歳の時、知人に勧 止められて「博多一番」の開 業に携わりラーメンの世界 へ。2007年に独立して、 大橋で「らぁめん39番地」 を創業。 2021年6月、下呉 服町に移転リニューアル


中世における日本最大の貿易港湾都市であった「博多」。県外の観光客などは福岡全体を博多と称することも少なくないが、城下町であった福岡と商人の港町であった博多は違う。豊臣秀吉による九州平定により、荒廃した博多の町は復興し「太閤町割り」によって都市としての基礎が作られていった。

 

現在の呉服町駅や祇園駅界隈はかつての博多の中心地。そんな下呉服町の住宅街に新しく出来たのが「らぁめん 39番地」だ。

「ここは昔「下浜口町」と呼ばれた場所で、私の地元なんです。昔父が中華料理屋を営んでいて、子供の頃は出前などを手伝っていました。いつかはこの地に戻ってラーメン屋をやりたいと思っていたんです」。

 

店主の渡邊賢司さんはこれまで20年近くに渡りラーメンを作り続けて来たベテラン職人。南区大橋で14年にわたり愛されて来た店と味を、地元である呉服町へ移転させた。 「大橋には長い常連さんもいらっしゃったのでかなり悩みましたが、泣く泣く移転を決めました」。

きめ細かな網ですスープは、 骨の旨味だけを抽出 した味わい。 ラーメン作りは教わったことがなくすべ てが独学。 長年の試行錯誤の繰り返しからたどり着 いた一杯は、懐かしさと新しさを併せ持っている39 番地ならではのオリジナルの豚骨ラーメンだ

若い頃は何をやっても続かずに、 フラフラしていたという渡邊さん。 30も半ばを過ぎた頃、見るに見かねた先輩が「ラーメン屋をやらんか」と声を掛けてくれた。ベイサイドプレイスに新しく出来る屋台村でラーメンを作る人を探していたのだ。そこから渡邊さんの長いラーメン人生が始まった。

 

「昔からラーメンは好きでしたが、もちろん作ったことはありません。しかしオープン日までにラーメンを完成させなければなりません。毎日食べ歩いて試作して、先輩に食べてもらう日々が続きました」。

 

試行錯誤を繰り返してラーメンが完成し、渡邊さんはラーメン職人として、貴重な経験を重ねていった。

「煮玉らぁめん」(650円)/普通のラーメンに煮卵を乗せるか、 チャーシューを増すか。39番地はメニューもいたってシンプル。卓上の辛子高菜などで自分好みの味を楽しもう
「手作り一口餃子 (8ヶ) 」(350円) / 博多らしい小粒の一口餃子も人気 の一品。手作りで野菜の食感が生きた、ラーメン同様優しくて飽きのこ ない味わい

そして、39歳の時に独立を果たして大橋の地で「らぁめん39番地」を開業。独立した年齢と『サンキュー』 の思いを店名に込めた。

 

渡邊さんが目指すラーメンは、おやつ感覚で食べられる、古き良き博多ラーメンの原型。毎日食べても飽きることのない味を目指した。

 

「私自身、ラーメンは構えることなく気軽に美味しく食べたいのです。だから、自分の好きなラーメンを作っていることになりますね」。

新しい店には大橋時代の看板も飾られている。 職人気質で無口な店主の渡邊賢司さんと、にこ やかな笑顔で出迎えてくれる奥様の千恵美さん。 夫婦ならではの連携プレーが良い店を作る

豚頭に豚足、鶏ガラも加えたスープは、臭みやしつこさがまったくないが、素材の旨味がしっかり抽出されたもの。しなやかで歯応えもある麺は創業当時から変わることはない。シンプルだからこそ奥が深く、 飽きが来ないラーメンだ。

創業当時 から変わらぬ細ストレート麺はしなやかで歯応えもある食感に。 味の決め手となる醤油ダレは今も日々改良を重ねている

新店ながらも歴史のある店。6月に出来たばかりの新しい店は、地元の人に愛され、誰でも気軽に入りやすい明るい店にしたい。店舗はラーメンに導いてくれた先輩が作ってくれた。地元呉服町の人はもちろん、大橋時代の常連客も足を運んでくれ、早くも人気店となっている。 「父が中華をやっていたこの町で私がラーメン屋をやるのは、もしかしたら運命だったのかも知れません。いつかは父の店で出していた焼飯やちゃんぽんも出せたら良いなと思っています」。

——

■取材を終えて

 

地元に長く愛されるラーメンと店

 

大橋時代から名前は聞いていましたが、恥ずかしながら行けていなかったお店。 呉服町に移転してすぐに足を運びましたが、 新店なのにすでに地元に根付いたような雰囲気に驚きました。 奥様のにこやかな笑顔と、厨房で寡黙に麺を揚げるご主人のコントラスト。 そして出て来たラーメンのホッとする「ザ・博多ラーメン」という ビジュアル。 しかし味わいは老舗の博多ラーメンとは異なり、旨味に厚みがあって後をひくもの。丁寧に作られているラーメンに嬉しくなり、友人にも勧めたほどでした。ご主人は私と同世代ですが、もう若くない身体ですのでどうかご自愛して頂きつつ、この町で長く愛されるお店を続けて下さい。

ラーメン評論家

山路力也 / Rikiya Yamaji

テレビ・雑誌・ウェブなど様々な 媒体で情報発信するかたわら、 ラーメン店のプロデュースなど、 その活動は多岐にわたる。「福岡ラーメン通信」でも情報発信中


掲載の内容は取材時のものです。取材日と記事公開日は異なる場合があり、メニューや価格、営業時間、定休日など取材時と異なる場合がありますので、事前に公式HPやお問い合わせにてご確認をお願いします。

 

 

らぁめん 39番地

【所】福岡市博多区下呉服町6-7-1
【☎】092-402-5010
【営】営 11:30~22:00
【休】水曜
【席】15席
【P】1台 カード/不可

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