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【福岡ラーメン物語 のぼせもん|49杯目 二代目けんのすけ 本店】

「中途半端ではなく一生懸命作りたい。僕にとっては『命のスープ』なんです。」

最初は遊びの延長だった。遊び仲間と一緒に店作りから始めたラーメン店には、仲間がたくさん集まった。最初は遊びだったラーメンに、いつしか本気で向き合っている自分がいた。妥協をせずに真剣に一杯のラーメンを作りたい。その時、隣には共に始めた仲間がいた。

「ラーメン」(720円)/豚骨と水だけを使い、濃厚ながらも臭みのないまろやかな味わいを併せ持つ新感覚の博多ラーメン。豚の大腿骨、背骨を二本の大きな鉄羽釜で炊き上げたスープは、日々継ぎ足していくことで旨味がどんどん深くなっていく。低加水の自家製ストレート麺との絡みも抜群だ

 


二代目けんのすけ 店主

北村和也 / KAZUYA KITAMURA

1979年、熊本県菊池郡生まれ。イベント会場でのラーメン販売を経て、2008年に「ラーメンけんのすけ」の立ち上げに参画する。その後「博多新風」での修業を経て、2013年『二代目けんのすけ」を開業


昨年の暮れ、再開発が進む天神の一角に一軒の豚骨ラーメン店がオープンした。真新しい厨房には大きな鉄の羽釜が二台並び、休むことなく真っ白な湯気を立たせている。前日までのスープをベースに新鮮な骨を継ぎ足しながら、いかに美味しさを抽出するか。汗をかきながらその釜と向き合う店主の姿は「格闘」と呼ぶにふさわしい。

「羽釜を使う理由は対流が良いというのもありますが、やはり圧倒的な火力です。これによって灰汁を取らなくても臭みが飛ぶんです」。

 

店主の北村和也さんは元々ラーメン屋をやるつもりはなかった。若い頃は職を転々としつつも、音楽にどっぷりとハマり、クラブやバーなどで毎日遊ぶのが楽しかった。そんな時に、遊び仲間がラーメン屋を始めることから人生が変わった。

 

「一緒にやらんか?と誘われて、自分もぷらぷらしてたので、そろそろ何かせんといかんなと思って。たまたま居抜きでタダで入れる物件があって、お金も無かったので自分たちで壁とか店を作って「ラーメンけんのすけ」を始めました」。

 

天井が高く開放感のある店内。カウンター席に面した厨房には大きな羽釜が鎮座する。テーブル席もあって家族連れなどにも使いやすい店だ

 

その仲間とは3年ほど一緒に店を切り盛りしたが、他のラーメン店で学びたいと店を離れて『博多新風』の門を叩き、店長まで務めた。

「一杯のラーメンに対してこれほどまで真剣に向き合うのかと。味作りには一切妥協しない姿勢を学びました。ラーメンがここまで深いものとは思いませんでしたね」。

徐々に自分で店を持ちたいという思いが強くなってきた北村さん。新風で3年半働いて退職。ちょうど時を同じくして、共に店を立ち上げた仲間がその店を閉めるので後を継がないかと声をかけてくれた。その想いに応えるべく、店名もそのまま残して「二代目」だけを付け加えた。

2台の羽釜は片方にフレッシュな骨、もう片方に古い骨が入っており、濃度を調整しながら合わせて一杯のラーメンに仕上げていく。麺はラーメン用の細麺は自家製麺、つけ麺用の太麺は東京の人気製麺所「三河屋製麺」のものを使う

北村さんが目指した味はこってりし過ぎず、物足りなさもなく、しっかりと乳化して豚骨の旨味を搾り取ったような味。羽釜に入るのは豚の大腿骨と背骨と水だけで、「呼び戻し」の製法で旨味を重ね続けていく。羽釜は軽くて扱いやすいアルミ製ではなく、敢えて重みのある鉄製を使っているのには理由がある。

「根拠はないのですが、鉄の方が旨いスープが取れる気がするんです。羽釜を使われている先輩方も皆さん鉄製ですし、スープに気合いというか思いが入る気がして(笑)」。

「つけめん並」(800円)/自慢の濃厚な豚骨スープに魚介の風味がガツンと効いた新メニュー。もっちりとした多加水太麺が良く絡み、ボリュームも十分

 

店を引き継いで5年で支店も出し、今回の天神出店を機に本店を天神に移し、本店は製麺所に変えた。「製麺は一緒に店をやっていた「先代」に声を掛けてやってもらっています。僕をラーメン屋をやろうと誘ってくれて、店も譲ってくれた仲間と、またあの頃みたいに二人で一緒にやりたいと思ったんですよね」。

「ミニ天津飯」(330円)/ラーメンと並ぶ看板メニューの「天津飯」は、北村さんが子どもの頃に食べた思い出の味を再現。ラーメンとセットで頼むのがオススメ

『二代目』が炊き上げたスープと「先代」が打った麺が丼の中で一つになりハーモニーを奏でる。『二代目けんのすけ』のラーメンは、今まで以上にパワフルになって天神にやってきた。そこには北村さんの人生や仲間への想いが凝縮されているのだ。

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■取材を終えて

店主の気合いが伝わる豚骨ラーメン

豚骨ラーメンほど作り手の性格や想いが表れやすいラーメンは無いと、個人的には思っています。北村さんのラーメンを初めて食べた時に感じたのは「真面目なラーメンだな」ということ。これだけ濃厚でありながら臭みなど一切なく仕上げるというのは、大量の骨を強火で炊き続けて、さらに常に濃度を確認しながら骨を抜き刺しして丁寧に漉していくなど、想像を超える手間暇と労力がかかるもの。それを一切手を抜かずにやり切らなければこのラーメンは出来ません。この取材で初めて、北村さんとじっくりお話しさせて頂きましたが、やはり実直な性格が随所に感じられる方でした。だからこそ多くの仲間が慕って一緒に働いているのでしょう。

ラーメン評論家

山路力也 / Rikiya Yamaji

テレビ・雑誌・ウェブなど様々な 媒体で情報発信するかたわら、 ラーメン店のプロデュースなど、 その活動は多岐にわたる。「福岡ラーメン通信」でも情報発信中


掲載の内容は取材時のものです。取材日と記事公開日は異なる場合があり、メニューや価格、営業時間、定休日など取材時と異なる場合がありますので、事前に公式HPやお問い合わせにてご確認をお願いします。

二代目けんのすけ 本店

【所】福岡市中央区天神1-13-13
【☎】092-713-7113
【営】11:00-15:00/17:30~0S21:45
【休】不定
【席】25席
【P】なし
カード/不可

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