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【福岡ラーメン物語 のぼせもん|39杯目 ラーメン内田家

「本物の家系ラーメンを伝えたい。
その一心だけで厨房に立っています。」

今からおよそ半世紀ほど前に、一杯の強烈なラーメンが横浜で生まれた。豚骨鶏ガラを炊いた濃厚で深みがあるスープに、パンチがきいた醤油ダレ、存在感のある太麺。一度食べたら忘れることの出来ない「家系ラーメン」は、いつしかラーメンの一ジャンルになった。そしてついに豚骨ラーメンの聖地福岡に、嫡流の一杯がやってきた。

「ラーメン」(710円)/豚骨と鶏ガラのフレッシュな旨味があふれるスープに、香り豊かでコクのある鶏油とキリリとした醤油の味わいが見事に調和。家系総本山吉村家直系の矜恃に満ちた、約半世紀愛されてきた豚骨醤油ラーメンがついに博多へ上陸


ラーメン内田家 店主

内田陽介 /  YOSUKE UCHIDA

1978年、宮崎県生まれ。家系ラーメンの魅力にひかれラーメンの世界へ。2012年に独立してタイで「内田家」を創業。2020年「吉村家」での修業を経て、博多にて直系店を
開業する


1974年、今から半世紀近く前に横浜で生まれたラーメンがある。豚骨と鶏ガラベースのスープは、醤油がキリリと立った味わいで、もっちりとした太麺が泳ぐ。具はチャーシュー、ホウレンソウ、大判の海苔が三枚。「ラーメン吉村家」という一軒の店から生まれた独創的なラーメンは、その味を愛した多くの弟子たちによって広められ、その屋号からいつしか「家系ラーメン」と称されるようになった。

「チャーシュー麺」(910円)/柔らかくしっとりとしたチャーシューは燻製することでスモーキーな香味に。スープに燻香が加わってさらに美味しさが増していく

そして今ではラーメンの一ジャンルとして、日本国内はおろか海外にまでその名を轟かせるほどになっている。10代の頃は音楽に傾倒しプロのDJを目指し、ジャマイカへ渡りレゲエの勉強をしていたほどの内田陽介さんが、ラーメンの世界に入ったきっかけも「家系ラーメン」との出会いだった。

 

「音楽では食べていけないと感じて、人生を模索していた時に衝撃を受けたラーメンが、当時博多に出店していた『六角家」さんでした。それまでラーメンには興味がなかったのですが、ラーメンに一気にハマって修業に入らせて頂きました」

その後、いくつもの人気店で経験を積み、家系ラーメン以外も学んだ内田さんだったが、独立するならやはり家系ラーメンしかないと確信した。地元で独立しようと思っていた時に、海外出店のオファーが届いた。「元から海外志向はあったのですが、たまたまタイに物件があって誰かやれる人はいないかという話がきて、すぐ手を上げました。最初のうちは受け入れて貰えず苦労しましたが、3年でタイの人たちにも喜んで頂けるようになりました」

タイで成功を収めた内田さんは、地元九州に本物の家系ラーメンを伝えたいという当初の夢を叶えるべく帰国。家系ラーメンを作る職人としての仁義を通すべく、内田さんは家系総本山「ラーメン吉村家」の創業者、吉村実さんへ挨拶に向かった。

「やはり家系ラーメンと名乗らせて頂く以上、吉村さんにご挨拶するのは筋だと思って、業者さんを通じて会う機会を作って頂きました。僕の熱い想いをお話をしている中で、思いもよらず吉村家で勉強させて頂けることになったんです」

家系ラーメンを名乗る店が増える中で、吉村さんは「本物の家系ラーメンを残していきたい」という想いが強くなってきた。内田さんの家系ラーメンへの想いが本物であると知った吉村さんは、毎朝の仕込み時間を使って、マンツーマンで内田さんに家系総本山の味を伝授した。

「Bランチ」(290円)/焼豚丼とキャベチャー(生キャベツとチャーシューを和えた人気トッピング)のセットを好きなラーメンと合わせることができる

「吉村さんは73歳になられるのに、今でも深夜2時半から一人で仕込みされるんですよ。僕が今まで教わってきたことの全てが覆され、そこから僕のラーメンの作り方も変わりました」

スープと共に重要な味の決め手となるのが、無添加醤油のタレ

 

 

家系ラーメンの麺といえば、東京の酒井製麺の太麺が定番。内田家が使っている麺は、吉村家直系でしか使えない直系専用麺。

晴れて九州初、全国でも7軒目となる吉村家直系のお墨付きを貰った内田さん。今も毎日吉村家の味に近づけるべく奮闘している。

「家系ラーメンが増えた今だからこそ、本物の味を広めていくことが大事。それが僕の使命だと思います」

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■取材を終えて

家系の魂をしっかりと受け継いだ職人

ラーメン評論家という立場上、満遍なくラーメンを食べて語るのは当たり前なのですが、一ラーメンファンとして言えば家系ラーメンはかなり好きなラーメンです。吉村さんの想いと同じく、本物の家系ラーメン店が少なくなる中で、しっかりと総本山の想いを受け継いだ店が出来た事は本当に嬉しい。内田さんはオープン前から存じ上げていますが、吉村家で修業してからはより家系ラーメンへの向き合い方が強くなったように感じます。今も日々吉村さんや先輩の直系店の方達と連絡を取りながら、より吉村家に近づける努力をされています。オープンしてまだ3ヶ月足らず。これからも一家系ファンとして定点観測していきます。

ラーメン評論家

山路力也 / Rikiya Yamaji

テレビ・雑誌・ウェブなど様々な 媒体で情報発信するかたわら、 ラーメン店のプロデュースなど、 その活動は多岐にわたる。「福岡ラーメン通信」でも情報発信中


掲載の内容は取材時のものです。取材日と記事公開日は異なる場合があり、メニューや価格、営業時間、定休日など取材時と異なる場合がありますので、事前に公式HPやお問い合わせにてご確認をお願いします。

ラーメン内田家

【所】福岡市博多区博多駅前3-9-12
【☎】092-292-3005
【営】11:00~22:00※変更の可能性あり
【休】なし
【席】19席
【休】なし
カード/不可

 

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