【気になるリノベ – Vol.10】実家の店舗兼住宅を、街の拠りどころとなるコーヒーショップに再生
古い建物をリノベーションしたからこその、唯一無二の空間づくりは真似したくなるヒントがいっぱい。
今、気になるリノベーションを掘り下げます。
家族の歴史が詰まった
築90年の古民家を活かす
モノレール香春口三萩野駅から徒歩2分。
昭和の風情が残る、こがね市場商店街に『ワンネスコーヒー ブリュワーズ』がオープンしたのは今から5年ほど前のこと。実はこの建物、店主・ツムラ シゲキさんが生まれ育った築90年の古民家をリノベーションしたのだそう。
元自衛官のツムラさんは、大のコーヒー好き。定年後にコーヒーショップをしようと考えていたが、実家の1階で父が営んでいたクリーニング店を畳むことになり、予定より10年ほど早くこの店を開業した。
ツムラさんと[タムタムデザイン]の田村晟一朗さんは共通の知人を介して出会った。
「田村さんは有名な方なので存じ上げていました。リノベーションを中心に手掛けてこられていましたし、これまでの事例を見せていただいたときに抜群のセンスを感じました。田村さんなら自分が思い描いているイメージを具現化してくれる!と確信し、お願いすることにしたんです」と、ツムラさんは振り返る。
田村さんもまた、ツムラさんのセンスと、この築90年を超える建物が刻んできた歴史に共感を覚えた。「ツムラさんご一家の物語も感じましたし、受け継がれてきたモノを大切にしたいというツムラさんの想いに感銘を受けました」。
こうして、出会うべくして出会った2人によって、築90年の古民家再生プロジェクトがスタートしのだ。
解体材を活用した
懐かしくも新しい空間
構造部分の修繕・強化を図りながら、柱や梁を活かし、解体材も使えるものは使うというスタンス。階段の踏み板や畳の下板、換気用の窓など、かつて使われていたものを棚や照明などに再生したほか、住居部分に残されていた角火鉢や囲炉裏なども店内に配置し活用した。
「ココはツムラ家の本家なので、親戚が帰ってくる場所でもあります。何十年も前からココにあったものが残っていれば、親戚にとっても懐かしさを感じてもらえるんじゃないかなと考えました」と、ツムラさん。
そんなツムラさんは、この店を開く以前からアンティークやビンテージの家具や道具を収集しており、それのコレクションが散りばめられたこの空間は、昭和の喫茶店のような落ち着きもあり、ツムラさんと同世代や親世代の人たちも利用しやすい一方で、昭和レトロブームが続く昨今、若者や海外からも注目を集めている。
また、ツムラさんはカフェ開業に向けたセミナーやさまざまなテーマを語り合うお話し会、ライブ、展覧会など、多種多様なイベントも積極的に開催しており、イベント内容に合わせて柔軟に対応できる工夫が随所に施されている。
「今後については店舗を増やすなどの事業拡大は考えていません。それよりも、『ココに来たから人生が変わった』、『ココでの出会いが転機になった』など、人々の生活や人生の起点となるような店を長く続けていけるといいなと思っています」。
一方、さまざまなプロジェクトや公演などで全国を駆け巡る田村さんにとっても、この場所はホッとくつろげる大切な場所。「当社のプロジェクトの一つとして県内外のお客様をお連れすることもあります。ツムラさんに繋げば、そこからまた何かが拡がっていくという思惑もあります(笑)」。
ツムラさんと田村さんが出会い『ワンネスコーヒーブリュワーズ』が生まれたように、この場所やココでの出会いをきっかけに新しい何かが始まるーー90年の歴史を刻んできたこの建物は、リノベによって新たな機能を持ち、これからも街の“拠りどころ”として、この街を見守り続けていく。
[ 取材協力 ]
株式会社タムタムデザイン
[所] 福岡県北九州市小倉北区京町1-4-11 3階
[☏] 093-967-3115
[HP] http://tamtamdesign.net
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掲載の内容は取材時のものです。取材日と記事公開日は異なる場合があり、メニューや価格、営業時間、定休日など取材時と異なる場合がありますので、事前に公式HPやお問い合わせにてご確認をお願いします。
【Oneness Coffee Brewers】
[所]北九州市小倉北区黄金1-2-23
[☏]090-2064-4250
[営]12:00〜19:00
[席]20席 [P]なし
Instagram:@onenesscoffeebrewers