【福岡ラーメン物語 のぼせもん】中央区大名『博多くまちゃんらぁめん』

2019年11月15日 公開

「食べた百人が全員美味しいと言ってくれる。
そんなラーメンを作りたいと思っています。」

『博多くまちゃんらぁめん』の「くまちゃん」こと、店主・西熊賢二さんがラーメンの世界に入った理由は「お金持ちになりたい」だった。

「とにかくお金持ちになりたかったんです。小さい頃からラーメンが好きだったので、好きなことで稼げたらいいなぁと思って、ラーメン屋をやろうと思いました」

高校卒業後、機関工や建築業、塗装業などを転々とし、これといった目標があるわけでもなく、車やスノーボードなどの遊びのために働いていたが、24歳の時、ラーメンへの想いは捨てきれず、人気ラーメン店の門をたたき、知識も技術もゼロの状態で修業を始める。しかし、二年ほど経った時、志半ばでラーメンの世界から離れて再び塗装業へ戻ったが、やはりラーメンへの想いは捨てきれなかった。塗装業をやりながらラーメン店でアルバイトをして、現場の感覚を取り戻し始め、2014年、城南区神松寺に『油山とんこつ研究所くまちゃんラーメン』を創業。

西熊さんが目指したのは、濃厚で油分もありながらもクリーミーで飲み干せるラーメン。客の反応は賛否両論で、客や周りの意見に流されて自分の目指す味を貫くことが出来ず、味はどんどん変わり客足は減り、さらに原価をかけすぎて経営を圧迫していった。そんな時に、地元テレビ局の企画で先輩ラーメン店主たちのアドバイスを受ける機会を得て、西熊さんの揺らいでいた想いが固まった。
「先輩たちの叱咤激励で、店を始めた原点に戻れたと言いますか、自分が作りたいラーメンをブレずに出すんだという『軸』が出来ました」

骨を感じさせる濃いスープながら、スッキリと飲み干せる。百人が百人美味しいと思ってもらえるラーメンを作る。西熊さんの「覚悟」はラーメンにも表れ、多くの人から支持を受けるまでになり、さらにもっと多くの人に食べて欲しいと、2018年には飲食店が密集する大名へ移転し、再スタートを切った。
「僕が思い描いた理想のラーメンにはまだまだ届いていません。もっと美味しくなるはずですし、美味しくしていかなければならない。ラーメン作りに完成や終わりはないと思っています。だからこの店はいつまでも『とんこつ研究所』のままなんです」