【津屋崎千軒の作家たち】『花祭窯(はなまつりがま)』
古きものから脈々とつながる 先人たちの感覚を今の時代に生かす
花祭窯の藤吉さんは、江戸時代に作られた『古伊万里』の作風を踏襲し、現代生活の中でも使える形に進化させた器をつくる磁器作家だ。古伊万里とは有田焼や伊万里焼などに代表される『肥前磁器』の源流で、特に江戸時代初期の古伊万里は、少し灰色がかった素地に、絵柄も滲んでボケたような曖昧さに味わいを感じて人気が高い。
「私は、古いものを再現して、現代生活の中にそれを提案したいんです。でも古いものを古いままではなく、基本は『オリジナルを超えるものを作る』です。例えば秋刀魚の蕎麦猪口の絵は古伊万里にはなかった絵ですが、あたかも200年前にも存在したかのようにデザインしています。もちろん古典的な絵柄をそのまま使いたい場合もありますが、それでもサイズ感を変えたりハンドルをつけたり、古いものとまったく同じになることはない。
でも洋食器が主流だからといって絵柄も形もいきなり洋に変えてしまっては、今まで培ってきた文化がそこでブツンと途絶えてしまいます。私はその作品が、どこにルーツがあるのか、どこから受け継がれたものなのかというのが、わかるような変化の仕方をしなければと思うのです。
だから私は敢えて古い技法にこだわって、土、絵具、焼き方、形のつくり方など数百年前の技法をそのまま踏襲しています。ろくろは電気ですけどね(笑)。ここへ来て実は窯も電気に変えたんですが、最初は思うようにならなくて⋯窯によって個性があります。自動制御であっても人の経験からくる微調整が必要です」
400年来、窯の中の炎を見続けてきた先人が感覚的に覚えてきたのは火加減。その感覚の大切さこそ、未来につないでいきたい文化なのではないだろうか。
電話:0940-52-2752
※訪問の際は要事前連絡
この記事は福津市観光情報パンフレット『ふくつのふく』から抜粋したものです。パンフレットは福岡県各地の観光案内所で配布しています。またはデジタルブック版(PDFデータ)を下記購入ボタンから無料でダウンロードできます。
掲載の内容は取材時のものです。取材日と記事公開日は異なる場合があり、メニューや価格、営業時間、定休日など取材時と異なる場合がありますので、事前に公式HPやお問い合わせにてご確認をお願いします。