【福岡ラーメン物語 のぼせもん。】城南区七隈『無邪気 本店』
現在、不要不急の外出は控えましょう。
*本記事は宣言解除後のおでかけ先候補としてお楽しみください。
「福岡で出しているこのラーメンを、いつか東京の人に食べて欲しいです。」
「ラーメン並」(680円)/濃厚で深みのある豚骨醤油スープにキラキラとした鶏油、もっちりとした食感の太麺が見事にマッチする。
地下鉄七隈駅から歩いてすぐ。学生たちが多く暮らすこの街で、常に行列を作り続ける人気ラーメン店がある。そのラーメンは豚骨醤油スープに太麺というオリジナリティあるもの。今でこそ「脱豚骨」のブームで、福岡では様々なスタイルのラーメンが楽しめるようになったが『無邪気』がオープンした2012年は、かなり異色の存在だった。「自分の好きな味がどこまで通用するのか。自分で店をやるのなら、豚骨ラーメンしかない福岡の街で勝負がしたかったんです」
店主の新島さんは下関で家業の建築業に就いていたが、10代の時にテレビで観た格闘技の世界に魅せられ、格闘家を目指して上京した。その時にジムの近くで食べた一杯のラーメンに衝撃を受けた。それが横浜発祥の「家系ラーメン」だった。
「下関ではラーメンに興味がなかったのですが、東京でラーメンの美味しさを知りました。中でも家系ラーメン、豚骨醤油ラーメンの魅力に惹かれましたね」
格闘家からラーメンへ。新島さんの夢の形が変わった瞬間だった。4年にわたるラーメン修行を経て独立することとなった新島さん。しかし店を開いた場所は東京でも地元の下関でもなく、縁もゆかりもない福岡の街だった。福岡は言わずと知れた豚骨ラーメンの聖地だが、自らが好きな濃厚でパンチのある豚骨醤油ラーメンも負けていないと思った。さらに多彩なラーメンがひしめき合う東京よりも、豚骨醤油ラーメンを出している店がほとんどない福岡の方がチャンスがあると思った。
豚骨と鶏ガラを使ったスープは、常に付きっきりで骨を入れ替えながら最高の状態を維持する。濃厚なスープと良く絡む太麺は、地元福岡の老舗製麺所と一緒につくり上げたオリジナルのモノだ
「福岡の人は豚骨ラーメンがソウルフードですから、最初はなかなか受け入れてもらえませんでしたね。特に細麺文化の中で太麺の美味しさを認めて頂けるまでには時間がかかりました」。新島さんのラーメンは家系ラーメンを基本にしてはいるが、福岡の人の舌に合うようにローカライズしている。味の決め手となる醤油は地元福岡の老舗醤油蔵のものを使い、関東とは異なる甘さを活かした。見た目こそ家系ラーメンのように見えるが、福岡スタイルの豚骨醤油ラーメンになっているのだ。
醤油のパンチが効いたスープはライスとも相性抜群。スープの染みた海苔と一緒に食べるのがオススメ
「最近ようやく福岡でも家系ラーメンの店が出てきましたが、ウチのラーメンは家系ラーメンではありません。家系で教わったことをベースにして自分の好きな味を追求して辿り着いた、無邪気オリジナルの豚骨醤油ラーメンなんです」
創業から8年。しっかりと福岡の人たちに愛されて、今では4店舗を構える人気ラーメン店になった。2019年には豚骨スープと水炊きを融合させた「豚水炊き」という、ラーメンと異なる新たな業態にも挑戦するなど、新島さんの夢は広がり続けている。「創業当初からの夢であった東京に『無邪気』を出して、福岡で出している味で東京のラーメンと勝負してみたいですね。そしていつかは地元の山口にもお店を出したいです」
「魚介豚骨つけ麺」(780円)/ラーメンに負けず劣らずの人気を誇るメニュー。ラーメンよりもさらに濃厚なスープを楽しめる
shop information
無邪気 本店
住所:福岡市城南区七隈4-8-17 大原マンション1階
電話:092-863-3553
営業時間:11:30〜15:00/17:00〜24:00
定休日:なし
本記事は「シティ情報ふくおか5月号」より抜粋して掲載しております。掲載の内容は取材時のものです。取材日と記事公開日は異なる場合があり、メニューや価格、営業時間、定休日など取材時と異なる場合がありますので、事前に公式HPやお問い合わせにてご確認をお願いします。