映画『いつまた、君と〜何日君再来〜』尾野真千子&向井理インタビュー!
—俳優・向井理が、祖母の卒寿の記念に自費出版した「何日君再来」を元に、7年の歳月をかけて企画・映画化した作品。NHK朝の連続ドラマ「ゲゲゲの女房」の脚本家に自ら依頼し、『60歳のラブレター』(’09)『神様のカルテ』(’11、’14)の深川栄洋監督がメガホンをとった『いつまた、君と〜何日君再来(ホーリージュンザイライ)〜』。祖母・朋子役の尾野真千子、向井自らが祖父・吾郎を演じ、戦中・戦後の混乱期をたくましく生きた夫婦の波瀾万丈の人生を描いた感動作だ。
向井:NHK連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」(’09)を撮影していて、その時の台本がすごく素敵だったんです。自分の家族の中にもそんな物語があったなぁと思い返して、映画化したいという構想はもっと前から持っていたので、脚本家の山本むつみさんに手記をお渡しして、「いつかわからないですけど、映画化する時はぜひ書いてください」とお願いしました。そこから、いろんな作品に出るようになり、出会った製作プロダクションの方に「こういう手記があるんですが」と、第三者から見たその後の話も付け加えてお話させていただいたら、話が動きだしました。
監督は深川さんにお願いしたい、そして脚本家は既に山本さんにお渡ししているので、正式にオファーを出していただきました。今まで深川さんの作品を観てきて、ヒューマンな部分を繊細に撮られる人だな、というのと、以前ご一緒した時に、すごく熱い人だったな、という印象を持ちまして。わ〜っ!と声だかに言うのではなく、静かに淡々と語りかけてくれるんです。その言葉の端々に、映画に対する熱意や愛情を感じられる方だというのと、そんなに年齢が離れていない監督とやりたいという思い。自分と同じ世代の人と、戦後の、昭和の映画を撮りたい、作りたい、残したい、という思いがありました。
—包容力に満ちあふれた朋子さんの役作りはどのように?
尾野:意識していたことは、始めに向井くんからおばあちゃんはいつもニコニコしている人だったんだよという話を聞いて、ああ、じゃあ、ニコニコしていようって、自分の居方が導かれました。温かく家庭を包んでいた人だったんだっていう人物像が確立していたので、そういう人でいようと思いました。大変なシーンでも、微笑ましかったり、見ているだけでそういう感じになっちゃうんです。正直な人だから、泣く時は泣くし、つらい時はつらいと思っているんだろうな、と思うんですけど、どんなにつらい状況でも、子どもたち、そして笑わせようとしてくれる吾郎さんがいたら、楽しくなっちゃう。みんなで朋子さんという人を作ってくれたと思います。
—ご家族、ご親戚の方は映画をご覧になって、どうでした?
向井:自分たちのことが描かれているので恥ずかしさが先にあったようで、観終わって、噛み締めていたようです。母らは、尾野さん演じる朋子を「お母ちゃんだった」って言っていましたね。試写の時は、登場している人たちよりも、その息子、おばあちゃん子だった、僕のいとこたちの方が泣いてました。
—戦中、戦後を生き抜いた朋子さんを演じられて、尾野さんの心に残るエピソードは?
尾野:これだけ、物もない、食べ物がない、ないのは当たり前という時に、何もないのに幸せでいられることが不思議でした。今の時代だと、イライラしたり、人と争ったり、こんな気持ちにはきっとなれないと思うんですね。でもこの時代の人は、ないのが当たり前で、みんなで協力しながら物を得ていったり。幸せに感じていることが、不思議だけれど、そういう時代だったんだな、と学びました。
—今よりも情報もなく遠く感じる海外について行く!と決めた朋子さんの決断力に驚きました。
尾野:それだけ吾郎さんが魅力的だったんでしょうね(笑)。ついて行っても何か楽しいことがある、とかワクワクしたんだと思います。それだけ吾郎さんに魅力があるんです。
向井:何なんでしょうね? 不思議ですね〜。
—向井さんは、おじいさまに似ているのでしょうか?
向井:どうでしょう? 母方似とは言われますが…。兄よりは似てると言われますね。
—魅力的な吾郎さんへの信頼が朋子さんにあったんでしょうね。
尾野:本当に、演じてて楽しいんですよ。向井くんと芝居をやっていて、大変なシーンはあるんですが、ふとした楽しいシーンに、本当に幸せな気分になれたんです。「この人となら楽しい芝居ができるかも」と生身の尾野真千子が思ったように、大変な時でも、笑わせてくれる、家族を守ってくれる吾郎さんがいる、というのは、朋子さんにとって、とても頼もしかったんだな〜と。すごく自分も共通して思いました。
向井:カットされたシーンがあるんですけど、車が引き取られることになって、ぞうきんでひとり黙々と磨いていると、朋子さんも「じゃあ一緒に磨く」って言って、2人で車を磨くシーンがあったんですが、カットされちゃいましたね。吾郎さんらしいシーンだったんですけど。すごく実直だったんですね。真面目で。闇市に行かないなんて当時では考えられないんですよ。それで餓死した人がいるとニュースになるくらいなのに、そんな愚の骨頂をやってしまう高潔な人でした。男としては格好いいけれど、一家の主としては困った人でしたね(笑)。ふだん祖父の話をあまり聞いたことなかったのですが、ユーモアがある人だった、そして男女差別をまったくしない人だったと聞いてました。あの時代に10歳も年が離れた妻と同じ目線で話をしていたと聞いていて、それって、当時としてはすごい人と思われる時代だったのですが、そのすごさって、時代背景をちゃんと勉強しないと、自分でもわからないんですよね。祖母が倒れてから退院した時に、祖父のことを聞いたら「愛してる」と言ったんです。7年かけて映画を作り終わって、これは壮大なラブレターであり、ラブストーリーだったんだなと思います。
—この日本が貧しい時代に支え合って生きた素敵な夫婦の話をぜひ映画館で!
T・ジョイ博多ほか全国絶賛上映中!
『いつまた、君と〜何日君再来(ホーリージュンザイライ)〜』公式HP