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【笠井信輔さんスペシャルインタビュー】コロナウイルスに負けるな!どん底が教えてくれた「生きる力」。

どん底でも前を向く ヒントと勇気を伝えたい

 

——もうすっかり、私たちが知っている笠井さん。お元気そうですね!

笠井:緊急事態宣言の最中、2020年の4月30日に退院しまして。当時は白血球の数値もまだまだ低かったのですが、今は正常値に戻りました。新型コロナウイルスの感染予防も兼ねてしばらく家に籠っていたおかげで執筆にも集中できて、僕としては3冊目となる本『生きる力』の出版が叶った感じです。

 

——退院後5月から執筆をして11月20日に発売。かなりスピーディですよね。

笠井:ある方から、「人は過酷な体験をした時、後からそれを回想すると、大体が良い話に置き換わって、『あれはいい経験だった』と語るようになる」と伺ったんです。なので1日も早く取り掛かって、闘病中の想いをできるだけストレートに書かなくちゃと思いました。

 

——読ませていただくと、テレビマンとして活躍されている笠井さんだからこその「闘病記」だと感じました。

笠井:テレビというものが、話題の間口を広げることで多くの人に共感していただく媒体だからかもしれないですね。実はこの本も、最初はがんを経験した方のために書き始めたものだったんです。でも途中から「それだけでいいのだろうか?」と。結果、人はどん底でも前を向けるということを伝えられる本を目指すようになりました。

 

——この中で、伝えたかったことは?

笠井:まずは医療の目覚ましい進歩ですね。僕が罹患した『悪性リンパ腫』にも、5年前とは比べものにならないくらいさまざまな治療法や薬が生まれているんです。また10年ほど前は、医療サイドが患者に対してできる限り丁寧な説明を行うことが重視されていましたが、今はそれに加えて、患者自身がどういう治療を受けたいかを自ら発信できる時代になりました。医師、看護師、薬剤師、栄養士の方々とコミュニケーションを取ることで、お互いがより良い治療方法を見出し、手を取り合って寛解を目指す。僕を含め、昭和世代はつい、「先生にお任せします」「耐えます」という姿勢になりがちなんですが、もはやベストではない。それが今回、医療現場のプロの方々に触れながら感じたことでした。

 

『生きる力 引き算の縁と足し算の縁』著者:笠井信輔/定価:本体1,400円(税別) ※電子書籍も同時配信/発行:KADOKAWA

 

入院生活を経て知った 人と人が繋がる「光」

 

——闘病中は、ブログやインスタなどのSNSにもかなり救われたとか。

笠井:2019年の10月にフリーランスになって、SNSを始めたんですが、最初は一般人の息子よりフォロワーが少なくて(笑)。でも、がんの告知をしたことで、それが30万人に急増したんです。1日1000件ほどのコメントが寄せられるので、あえて返信は控えさせていただく姿勢をとったのですが、それでも皆さん、温かいコメントをくださるんですよね。「世の中には、誰かのことを応援しようと思っている人がこんなにもいらっしゃるんだ」ということを目の当たりにして、ものすごく感動したんです。

 

——笠井さんのSNSのコメント欄、いつも賑わっている印象でした。

笠井:自分のこと、家族のこと、同じ悪性リンパ腫だけど今は治って働いていますよ、とかね。皆さんとにかくしっかり書いてくださって、それにどれだけ励まされたことか…。あと、僕は入院時期が12月~4月だったのですが、その間には、阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件、東日本大震災と、僕にとってはもちろん、日本全体にとっても大きな事件が起きた日が含まれていたんです。それらは決して風化させてはいけない事なので、日が巡ってくると自分も話題にさせてもらっていたんですが、そうすると今度は、それぞれのことに関するコメントがたくさん寄せられて。中には、フォロワーの方同士で声を掛け合うなど、新しい交流も生まれていたりして…。僕はメディアの人間として、長い間、「SNSに騙されないで」「気をつけて」、「SNSで傷つけないで」ということを発信してきた側だったんですが、この時、初めてSNSに「光」を感じたんです。こういう「光」の部分があるからこそ、こんなにも世の中に受け入れられているんだと。このことも本を通して、特に僕と同世代の方々に伝えられたらと思いました。

 

——新しい扉が開かれたんですね。

笠井:そうですね。がんになって、「良かった」とは決して思わないけれど(笑)、「だから、こうなれた」という発想の転換はすごく大切だと実感しました。この本のサブタイトル、「引き算の縁と足し算の縁」は、失った先にも得るものはある、ということを伝えるために付けたんです。そもそもこの考えは、東日本大震災で被災された方々から教わったのですが、僕自身、すごく救われました。今、コロナ禍で志望校に行けなかったとか、志望先に就職できなかったという人がたくさんいると思います。でもそのことを嘆いて生きていくのではなく、そこで何ができるかを考えて欲しい。もしかしたら、そこですごく大切な人と出会う可能性もあると思うから…。僕自身、病を経て、本を書くことになったおかげで、こうして《シティ情報ふくおか》に登場することができたんですから!

PROFILE

1963年、東京都生まれ。早稲田大学を卒業後、アナウンサーとしてフジテレビに入社。「とくダネ!」など、おもに情報番組で活躍。2019年10月、フリーアナウンサーに転身。直後、ステージ4の悪性リンパ腫であることが発覚。12月より入院、治療を始める。ブログで闘病の様子をつづり、ステイホームの呼びかけ(#うちで過ごそう)も行った。4月退院。6月に完全寛解し、7月から仕事に復帰した。映画通としても知られ、新作映画を年間130本以上スクリーンで観る。家族は妻と3人の息子。著書に『増補版 僕はしゃべるために(被災地)へ来た』(新潮文庫)。ブログ「笠井TIMES 人生プラマイゼロがちょうどいい」。インスタグラム(@shinsuke.kasai)のフォロワーは29万人越。

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