【インタビュー】「この映画で俳優として仕事ができたことは、人生においてとても良い経験」。映画『軍艦少年』主演・佐藤寛太さん
『ギャングキング』や『セブン☆スター』など、アウトローたちを描いたコミックで知られる柳内大樹の青春漫画『軍艦少年』が映画化され、12月10日(金)に全国公開される。主演を務めるのは福岡出身の劇団EXILE所属・佐藤寛太。福岡の大牟田市動物園を舞台にした映画『いのちスケッチ』(’19)での主演も記憶に新しいが、本作を「自分の人生において凄く良い経験になった」と話す彼にその手応えを聞いた。
誰しも人が亡くなってすぐに泣けないと思う。
一緒にいる時間で「一人じゃないよ」という
自分の気持ちを伝えたい
―佐藤さんは福岡出身で、今作の舞台は長崎でしたね。以前主演された『いのちスケッチ』は大牟田が舞台でしたが、九州や故郷の福岡への思いを聞かせてください。
佐藤:僕は父親が長崎出身で母親は福岡出身です。どちらの県でも主演映画を撮らせていただいたので、それは親孝行になったと思うし縁があるなと思います。僕自身の福岡の思い出で言うと、僕はEXPGという大名のスクールに通っていたので、そこの生徒のみんなで一緒に空き時間に何か食べたりしたことはよく覚えています。勝手気ままに生きている、「週刊少年ジャンプ」を楽しみにしている普通の高校生でした。あ、今回の原作は集英社じゃないんですけど(笑)。
―原作のコミックはどういう気持ちで読みましたか?
佐藤:オファーをいただいてから原作を読みましたが、柳内先生の他の作品は学生時代に読んでいましたし、ヤンキーとかアウトローだけど熱血で自分の心に真っ直ぐな奴らを描く先生だから、そういった主人公を僕が演じられるのは凄く嬉しかったです。脚本は漫画の展開も残しつつ、リアルな部分を感じました。最初に「実写化する上で、漫画をふだん読まない人やこの原作を読んだことがない人に届ける時に、自分が感じたこの感動を超えられるかな」ということを考えた気がします。
―母親を亡くす場面から物語は始まります。主人公・海星と加藤雅也さんが演じる父親との関係性が悪化していきますが、反目しあいながらも父への尊敬を感じる佐藤さんの演技が印象的でした。
佐藤:肉親っていつも一緒にいるから喧嘩するわけですよね。でも、親だから最終的には尊敬しているし、親だからこそちゃんとしてほしいという思いも人一倍あると思います。他人にする冷たさと肉親にする冷たさは違うだろうなと意識していました。ただ、そこの演技に関しては無意識でしたね。撮影がほぼ順撮りでやりやすかったことも理由としてあると思います。
―荒んでいく海星は喧嘩のシーンも多かったですが、アクションで意識したことは?
佐藤:『HiGH&LOW』でお世話になったチームと今回一緒にアクションを作ったんですけど、『HiGH&LOW』の時はアクションは一つのエンタメとしてどうカッコよく撮るかという、観たことがないアクションをみんなで追求していました。今回はやるせなさを抱えた青年が、喧嘩をするけど何かが晴れていくわけではないというか。喧嘩をする海星が沼にハマっていく様子を表現できたらいいなと思っていたので、観ていて痛々しく感じるようなものを目指しました。
―物語の鍵となる軍艦島についても聞かせてください。
佐藤:僕たちが撮影していた長崎の野母崎からも、海の向こうに島の形がハッキリと見えていました。「上陸したらどんな感じなんだろう」ってみんなで話していて、上陸の時もワクワクしていたんですけど、いざ上陸してみると一気に静かになって。島の声に耳を傾けるとかそういうことではないんですが、静けさからくる感動みたいなものがありました。みんなで黙々と足を進めて、各々が自分の世界に浸って島を見ていたような、あの瞬間は凄く厳かな気分になりましたね。今回はふだんだったら絶対入れない所でも撮影をさせていただいて、原作通りの場所に立たせていただいたんです。軍艦島は初めてなのに原作を読んでいるので既視感があって、もしかしたら二度と味わえない場所に立たせていただいているという高揚感と感動でいっぱいでした。
―共演シーンの多かった濱田龍臣さんと山口まゆさんの印象はいかがでしょう?
佐藤:僕は23歳で学ランを着ていたのでお兄さん的なポジションだったかもしれませんが、あまり自分が年上だと感じることはなかった気がします。龍臣もまゆちゃんも撮影時は未成年だったと思うんですけど、龍臣は小さい頃から俳優をやっていますし、僕は彼を見ていた側だったので凄く尊敬しています。まゆちゃんも芯が通っていて、ちゃんと自分の持っていることを表現できる人だから共演が凄く楽しかったです。
―最後に、“喪失と再生”は作品の根幹となるテーマだと思いますが、大きな喪失を経験した人が身近にいる場合、佐藤さんならどのように寄り添いますか?
佐藤:僕も凄く難しいなと思っていて、年齢を重ねると大切な人を失う機会もあるじゃないですか。TPOによりますが、ただ一緒にいるということが誠実なのかなと思います。意外と、誰しも人が亡くなってすぐに泣けないと思うんです。どこかに連れて行くとか一緒にご飯を食べるとか、その人の生活の中に自分がいるということ…そういう時間を一緒に作りたいです。その人が沈んでいる時も一緒にいてあげることが、共に人生を歩むということになるのかなと思うので、やっぱり日頃から友だちとか大切にしたほうがいいですよね。いつ誰が自分に手を差し伸べてくれるかわからないですから。一緒にいる時間で「一人じゃないよ」という気持ちが通じたらいいなと思います。
僕は中学生の時に「演技をしてみたい」、「俳優になりたい」と思ったんですけど、この作品では特に充実感が感じられて。僕の中では、この映画で俳優として仕事ができたことは自分の人生においてとても良い経験になりました。
■映画『軍艦少年』 / 12月10日(金)公開
© 2021『軍艦少年』製作委員会
出演:佐藤寛太 加藤雅也 / 山口まゆ 濱田龍臣 / 赤井英和 清水美沙 / 大塚寧々
監督:Yuki Saito
脚本:眞武泰徳
劇中画:柳内大樹
原作:柳内大樹『軍艦少年』(講談社「ヤンマガKC」刊)
主題歌:卓真「軍艦少年」(UNIVERSAL MUSIC)
制作プロダクション:エノン
製作:『軍艦少年』製作委員会
配給:ハピネットファントム・スタジオ
https://happinet-phantom.com/gunkanshonen
https://twitter.com/gunkanshonen
https://www.instagram.com/gunkanshonen
ヘアメイク:KOHEY
スタイリスト:平松正啓(Y’s C)