【福岡演劇/インタビュー】ムロツヨシが演出・出演する『muro式.がくげいかい』、本日より太宰府天満宮で開幕!
ムロツヨシの夢が詰まったステージが福岡に!
ムロツヨシがやりたい役者・脚本家と「やりたいことをやる」というコンセプトで’08年から10年間、ほぼ毎年開催してきた『muro式.』。福岡公演にむけて、ムロツヨシが公演やキャストへの思いを語った。
―まず、ムロさんがやりたいことを教えてください。
本当であれば、「muro式」は’18年の『muro式.10「シキ」』で一度幕を閉じまして、これから新しい表現方法や、今までとは違う自分をプロデュースしたいと思っておりました。それが数年前にコロナウイルスがやっきて、エンタメ界は大きくダメージを受けてしまった。稽古すらできない状況で「できることは何だろう」と考えた時に、何でも中止にして足を止めるばかりではなく、ここで前例を作るべきだと思いました。そして、ずっとやろうと思っていた野外劇、トラック劇をこのタイミングでやろうと。
一度は幕を閉じましたが、この時代だからこそ今まで築き上げた関係性や共有できた経験値をもとに、「muro式.」でやっていた‟何も考えずに笑いに来られるような喜劇”を作りたいですね。
―今回は『桃太郎』が題材となっているそうですね。
『桃太郎』は、僕が最初に知った物語という印象です。育った環境によっては違うとは思いますが、日本人の9割9分が知っているかもしれない物語だと思います。子どもたちも知っている物語を通して、僕が子どもの頃に観ていて面白かった「ドリフターズ」からヒントを得ながら、子どもたちを笑わせられる舞台にしたいですね。
―劇場として太宰府天満宮を選んだ理由は?
野外でやるとなった時に、すぐに「太宰府でやりたい」と思ったんですね。というのも、ももいろクローバーZさんが太宰府でライブをやっているのを知っていて、さらに本広監督が太宰府天満宮の方を紹介してくれていたので、野外劇をやると決まってからすぐに会いに行きました。その方が演劇やエンタメ界を信じてくれているというか、「人が集まるには力が必要で、そんな場所になりたい」という考え方で。太宰府公演を満席にして、天満宮の皆さんにもお返しできたらいいなと思っています。
―ムロさんの演出方法は?
特に『muro式「がくげいかい」』に関しては、リモート会議もしましたし、ホワイトボードを使ってみんなで意見を出し合いました。永野宗典がみんなの考えを簡単な絵にしてくれるので、考えを共有しながらアイデアを作っていけました。演出方法も普通の舞台だと、演出家と演出部だけで話し合うんですけど、「muro式.」は出演者も入れて話し合い、言われたことだけをやるのではなく、自分が提案したものが採用されると稽古が身体に入るスピードも違うし、永野・本多の経験値や、やりたいことを取り入れてすべてを足し算・掛け算して、自分のやりたいことにするっていうのが僕の演出方法ですね。
―400人の中から選ばれた西野さんの魅力を教えてください。
オーディションに来てくれた役者の中で、僕が20代の頃に持っていたような野心を一番感じたのが西野さんでした。その野心を若さゆえに隠しきれていなかった部分が逆に新鮮だったし、こういう方に「muro式.」を背負ってもらいたいなと思いました。あとは、立ち姿ですね。凛としている立ち姿がキレイです。驚いたのは、彼女の吸収するスピードの速さ。その分悩む時間は長かったですが、それを待つ時間も僕にとっては経験でしたね。僕たちなりの答えを言ってしまうと、自分で考えずにそれをやってしまうので。
僕は劇団に入っていなかったので伝える経験は乏しかったのですが、今回は少しずつ西野さんに僕の成功体験と失敗した経験を織り交ぜながら伝えて、彼女が取り入れるのか、取り入れないのかジャッジしてもらえたらと思います。
―ヨーロッパ企画との出会いは?
今はもうないんですけど、23~4年ほど前に演劇の「E-1グランプリ」っていうのがあったんですよ。その第1回予選に、僕とヨーロッパ企画が別々で出演していたんですよね。僕らは決勝戦に残れなかったんですけど、ヨーロッパ企画は残っていて。悔しい思いで彼らの舞台を観たら、群像劇でめちゃくちゃ面白くて…!面白いっていうのも悔しかったから言わなかったんですけど…(笑)。それが最初でしたね。演劇を続けていた中で、本広克行監督に出会って、監督がヨーロッパ企画の作品を映画化するときに僕を呼んでくれたのが初めての交流ですね。
その『サマータイムマシン・ブルース』のメインキャストとして、3人ともほぼ映像が初めての出演で、僕らだけ小劇場でしかやってない‟チーム小劇場”なんて言いながら、カメラの前に立つことを怖がりながらやっていましたね。初めての場所を一緒に経験したのは大きくて、それが「muro式.」立ち上げの時に一緒にいてもらうきっかけにもなったと思います。3人で足りないところを補いながら、三角形の形を臨機応変に変えていけるような関係性です。
―劇中でアドリブはありますか?
「muro式.」は、アドリブの時間を作っているんですよ。このセリフを言ったらここに戻るっていうルールで、他のところではあんまりやってないし、非常にリスキーなつくり方です。今回もたくさんアドリブの時間があるので、楽しみにしてほしいですね。
あと、永野宗典という役者が何をしだすかわからないんですね。本多力とムロツヨシが自由人のように見えると思うんですけど、実はこの二人が支えてる永野が一番面白かったりするんですよ。これが悔しいんですよ(笑)。「また始まったよ、あいつがまた面白くなってるよ」って楽屋でも本多と2人で話すんですよ。
「muro式.」では誰かが前に出たら、臨機応変に三角形を作るんです。そこでの本多力のポジショニングも素晴らしいんですよ。お笑い芸人たちはすぐ見抜いて、「一番すごいの本多さんでしょ?」って言ってきますね。「俺じゃないの?」って聞いても、「ムロツヨシは本多に助けられている」って。その三角形を観ていただきたいですね。
―ムロさん自身の‟がくげいかい”の思い出はありますか?
「ものまね四天王」というモノマネ番組が流行ったのが小学校中学年の時でした。その頃、誰もが知っている森進一さんのモノマネを、休み時間にやって学校で目立とうとしていたのが、僕にとっての‟がくげいかい”でしたね。そこから物心がつきすぎて恥ずかしがり屋になり、中学でバンドブームになり…。バンドをやりたいというヤンキーさんは、カッコつけたいけど真ん中で歌うのは恥ずかしいからと、お調子者だった僕が半分命令でボーカルをすることになったのも、僕にとっては‟がくげいかい”かもしれません。
muro式.がくげいかい
日程 4月22日(金)~26日(火)14:00/19:00 ※22日と24日は19:00のみ
会場 太宰府天満宮 天神広場 特設会場(野外)
料金 [昼公演]一般 5000円 高校生以下 2000
[夜公演]一般 8000円
※各公演若干枚数当日券販売あり
出演 西野凪沙、本多力、永野宗典、ムロツヨシ
問合 「muro式.」福岡公演事務局(FBS福岡放送内)☎092-532-1830(平日10:00~17:30)