【福岡麺本2022 – vol.11】店主にしっかり寄り添い 福岡の麺文化を支える! 製麺工場『博多製麺処』見学
細部までの“こだわり”に
応えてくれる製麺所
ラーメンはじめ麺料理にとって、“麺”そのものは、言わずもがな重要な存在である。たとえ同じスープでも、麺の太さ、形状、加水率、切り出汁の違いでもその一杯の表情、味の印象はガラリと変わる。当然、作り手の職人たちは麺に対して並々ならぬこだわりがあり、自店のスープにマッチする麺を追求。いつもの店で何気なく啜っている麺においても、それに辿り着くまでには作り手、製麺屋の研鑽があったに違いない。一時期は自家製麺が良しとされている頃もあったが、「やはり、長くノウハウを蓄積したプロの製麺屋に麺作りはまかせるべき」との考えが昨今店主の間でも広まっている。
その製麺業界において今、旋風を起こしているのが『博多製麺処』だ。福岡県がラーメンのために開発したラー麦100%(特にこの“100%”が画期的であった)の麺をいち早く開発し、2017年の創業以来急成長をしてきた。“博多製麺処といえばラー麦麺”のイメージは広く浸透しているが、同製麺所が業績を伸ばしたもう一つの理由は「店主にとことん寄り添う」姿勢にある。「どんな麺でも作ります!」と力強く語る工場長の新吉さん。店主へのヒアリング、試食を繰り返し最良の麺をより低コストで提供。小ロットから受付け、店作りのアドバイスも行うなど「店主が安心してまかせられる心強い相棒」であり続けている。
系列の豚骨ラーメン店『博多三氣』、『うどん大学』ほか、“ワールドラーメングランプリ2017”で優勝した警固『大重食堂』、住吉『入船食堂』、筑紫野市『住吉ラーメン太閤』など、『博多製麵処』の麺を採用している有名店は枚挙にいとまがない。
“ラー麦”の特性を
知り尽すプロ
『博多製麺処』の原点は、『博多三氣』水城店の隣にあった小さな製麺室。そこから“ラー麦麺を極めんとする”取り組みがスタートし、2018年には大野城市に一大麺工場を竣工。現在はラーメン、うどん、ちゃんぽん麺など月間30~40万玉を製造している。製麺工場の中を見せてもらうと、とにかく広い。そして、衛生面、品質管理も徹底されていることが分かる。
「“ラー麦麺”と一言でいっても、歯切れの良さが特徴の低加水麺から、モチモチ感のある中加水麺、多加水麺とさまざまな種類を作っています。王道の豚骨ラーメンだけでなく、醤油ラーメン、つけ麺、まぜそば、ちゃんぽんと幅広く“ラー麦特化”で対応できるのが強みですね」と、新吉さんが小麦の香りが漂う製麺室で教えてくれた。
また、製麺機にセットして使う”切刃”の種類も多彩。麺の太さを決めるもので、3㎝の麺から何本取れるかで“番手”が決まっているものだが、同製麺所ではうどん用の6番から極細の28番までラインナップされている。「太さはもちろん、“角”“丸”“平打ち”など、あらゆる形状にも対応しています。最近は、『博多三氣』で出す横浜家ラーメンの麺もラー麦100%で製麺。こちらは“逆切り”という特殊な切り出し方で作ってるんですよ」と新吉さん。太さ、厚み、形状、長さ、色合い、さらには、麺に野菜など他素材を練り込むタイプまで、『博多製麺処』に作れない麺はないだろう。
食育活動や新事業にも
積極的に取り組む
『博多製麺処』は、ラーメン店経営への間口を広げ、業界全体の底上げにも大きく貢献している。「最近は意欲的な若手の店主さんも多く、創作麺や限定麺用でウチに依頼していただくケースも増えています。気軽に相談してください」と新吉さん。
また、これまで複数のラーメン店とタッグを組んだ「青春ラーメン」、昨年末に馬出『駒や』の大将たちと行った「年越しラーメン」では、麺を無償で提供するなど食育につながる活動にも積極的だ。「僕自身にも刻まれていますが、ラーメンやうどんは多くの方にとってのソウルフード。今ある店を応援するのはもちろんですが、作り手を志す人が増えるための活動もしていきたい。自社工場で以前行っていた子ども麺作り体験なども、状況をみながら再開したいですね」と新吉さん。第一に目指すのは“月間100万玉製造”。『博多製麺処』のラー麦麺を味わう機会がこれからますます増えそうだ。
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取材協力
【博多製麺処】
[所]大野城市御笠川3-13-1
[☎]092-403-3255
[HP]https://www.hakata-seimensho.com
※掲載の内容は取材時のものです。
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