トップに
戻る

【福岡ラーメン物語 のぼせもん。|64杯目 麺酒場 朱拉】

「スープのとろみは10秒で変わります。理想のとろみを日々心がけています。」

ラーメン店がひしめき合う福岡の街で、いかに自分のラーメンを表現するか。どこにでもあるラーメンならば自分がやる意味はない。他にはないオンリーワンの存在でなければ、福岡では生き残れないのだ。

 

麵酒場 朱拉

今満 圭翼(Keisuke Imamitsu)

1986年、 熊本県熊本市生まれ。アルバイトで飲食の世界に触れ『博多だるま』で3年程経験を積む。居酒屋やカジュアルフレンチを経験し、2019年『麺酒場 朱拉』を創業。2021年には『ヌードルスタンドシュラ』を開業。

 

ラーメンは中国料理ではない。歴史的に見れば、中国の麺料理がラーメンの源流の一つであることは間違いないが、その麺料理が日本で進化した日本オリジナルの麺料理が今のラーメン。中国の麺料理と日本のラーメンとの違いは、そのスーブの目的にある。中国料理では多種多様な料理があるため、ベースとなるスープは軽めに仕上げなければならない。しかしラーメンはそのラーメンのためだけにスープを作ることができる。旨味を徹底的に追求して詰め込めるのがラーメンなのだ。

福岡市博多区神屋町の一角に佇む『麺酒場 朱拉』は、その名の通り麺類や一品料理が楽しめる麺酒場。醤油味の中華そばや塩ラーメンなど、数ある麺類のメニューの中で一番人気の一品が、酸味と辛味が共存する『酸辣湯麺』だ。本来中国料理であるはずの『酸辣湯麺』が、 なぜ看板メニューになっているのだろうか。

「僕自身辛いものが好きというのもありますが、僕が美味しいと感じる酸辣湯麺がなかったのと、酸辣湯麺を専門にしている店がなかったのでチャレンジしようと思いました」。

一般的な中国料理店とは異なるラーメン専門店のスープを使うのが特徴。

店主の今満主翼さんは青春時代にサッカーに打ち込み、卒業後はスポーツトレーナーの道を目指した。しかし、アルバイトで飲食の世界に触れて魅力を感じ、飲食店を営む夢を持つようになった。そしてアルバイト先の人気ラーメン店に就職し、カウンター商売の楽しさを知った。

「カウンターだと目の前でお客様の反応が分かるのが良いですよね。自分が作ったスープの時に替玉が出るのが嬉しくて。年上のお客様にも可愛がっていただけて、ラーメン屋をやりたいなと思いました」。

人気製麺所『製麺屋慶史』に特注した麵をメニューによって使い分ける。

その後、幅広い飲食に触れておこうと、居酒屋やカフェバー、フレンチなどで経験を積んで念願の独立を果たすこととなる。

『酸辣湯麺』(830円)/鶏ガラ、ゲンコツ、香味野菜で取ったベースのスープは、他の酸辣湯麺よりも旨味を蓄えたもの。中国産黒酢のまろやかな酸味と卵の甘味、そしてオリジナル辣油の辛味が見事に調和する

自分の好きなラーメンと居酒屋を合わせた『麺酒場』。他にはない一杯を作ろうと、看板メニューは『酸辣湯麺』に決めた。理想の酸辣湯麺に合わせたスープにたどり着くまでに2年を費やした。どっしりとした深い旨味のあるスープに、オリジナル麺を合わせた酸辣湯麺は、中国料理ではない、ラーメンとしての存在感がある一杯に仕上がった。

「酸辣湯麺はスピードが命。2人1組で息を合わせて一気に作らなければ、この酸辣湯麺は完成しません。卵のふわふわ感や、麺を持ち上げた時に綺麗に繋がる餡のとろみは、たった10秒で変わってしまいます。僕なりの理想のとろみを目指して一杯一杯丁寧に作っています」。

酸辣湯麺は注文を受けるごとに手際よく鍋で仕上げていく。そのスピードが美味しさの秘密だ

唐揚げなどの一品料理とお酒を楽しみ、酸辣湯麺や中華そばの麺類で締める麺酒場は人気を集め、昼夜を問わず愛される店になった。そしてより若者をターゲットにした2号店を大手門にオープンし、そちらも盛況になっている。

「人それぞれ好みのラーメンがあるので、誰が来ても好みのラーメンがある店にしていきたいですね。今はまだ福岡で2店舗ですが、地元の熊本に出店したいですし、いずれは全国で店舗展開できるように頑張っていきます」。

『中華そば』(750円)/鶏ガラ、ゲンコツ、香味野菜を丁寧に8時間かけて取ったスープに、アゴやキノコの出汁を使った醤油ダレを合わせた繊細な味わいの醤油ラーメン。ラーメンの表現の幅の広さがこの店の特徴だ

 

—–

●取材を終えて

酸辣湯麺を初めて美味しいと感じた

仕事柄、これまで多くの酸辣湯麺を食べて来ましたが、正直どこで食べても違いをあまり感じることができませんでした。しかし、朱拉の酸辣湯麺を食べた時には、明らかに他とは違うと感じました。 味のベースとなるスープの持つポテンシャルもさることながら、卵のふわふわとした火の入り方や、丼の上で円を描く辣油の美しさなど、細部にわたって意識が払われているのに驚きました。酸辣湯麺だけではなく中華そばや塩ラーメンなどのクオリティが高いのも特筆すべき点で、誌面が許すならもっとたくさんのラーメンを紹介したいほど。 まだ食べていないラーメンも多いので、また足を運ばなければ。

【ラーメン評論家 山路力也】
テレビ・雑誌・ウェブなど様々な媒体で情報発信するかたわら、ラーメン店のプロデュースなど、その活動は多岐にわたる。「福岡ラーメン通信」でも情報発信中

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

掲載の内容は取材時のものです。取材日と記事公開日は異なる場合があり、メニューや価格、営業時間、定休日など取材時と異なる場合がありますので、事前に公式HPやお問い合わせにてご確認をお願いします。

 

麺酒場 朱拉

【所】福岡市博多区神屋町3-24
【☎】092-986-4812
【営】11:00~15:00/17:00~22:00
【休】不定
【席】15席
【P】なし
【カード】不可

SNS運用代行サービス