こいつはもしや隠れた博多名物!? 年中無休、中洲酒場のカレー鍋
こいつはもしや隠れた博多名物!?
年中無休、中洲酒場のカレー鍋
中洲で飲食店を営むある大将が言っていた。
「酒一番? あそこはウチらのミーティングルームばい。
そんな時、みんなで突くにはアレは欠かせんもんねー」
その昔、須崎公園で屋台を引いていたある男も言っていた。
「アレ?中洲に寄ったら必ずここへ来て頼みますよ。
季節も時間も問わない、まさに万能一人鍋っす」
そんな周りの評判でずっと気になっていたメニューこそが、
今回紹介するコレなのである。やっとありつけたー。
中洲のみんなの集い処『酒一番』の「カレー鍋」。
時代ごとに移り変わる中洲エリアのど真ん中にありながら、
長年愛され続けている普遍的なこの日常酒場。
店内に張り巡らされた色とりどりの短冊メニュー札に紛れ、
密かに異彩を放つ「カレー鍋 六三〇円」の文字。
しかしながら、焼魚やらオムレツやらの数々の定食もあるなか、
カレーライスという文字なぞどこにも見当たらない。
むしろ「もつ鍋」「鴨鍋」「キムチ鍋」といった
鍋レパートリーのなかの不動メニューとして
変わらず君臨しているといったところだろうか。
冷えたジョッキに酒のアテ、もしくは一人晩酌に夜定食。
筆者はすこぶる意気地なしであるため、なかなか
この一人カレー鍋にはどうしても踏み切れなかった訳だが、
あまりの周りの評判に後押しされる、まるでバンジージャンプあるあるなかたちで、
この度やっとそのボーダーラインを超えることに成功したのである(大袈裟)!
おぉ、これが酒一番のカレー鍋!!
固形燃料を添えられた土鍋のなかででグツグツと煮えたぎる春菊、
白菜、豆腐にカマボコたち。なるほど、進む進む。お酒が進む。
これは鍋という一品料理というより何の気負いも心構えもいらない、
立派な日常の酒のアテなのだ。
小ライスでも頼むべきでは?と内心思ってしまった自分がバカだった。
そこは影の立役者、糸コンニャクがいい充足感を補っているのだ。
いやぁ〜これはいいぞ。スパイスカレーがもはやブームではなく
文化とした根付いた感のあるこの福岡の街で、
ふと原点に戻り噛みしめる日本人・博多人としてのこの安心感。
筆者も「うむ、うむ、うむ」と三回くらい頷いた。
これは周りの評判通り、立派な「隠れた博多名物」だと。
生ジョッキと博多明太で一人晩酌もいいだろう。
アジフライ定食で深夜食堂さながらの一人晩飯もいいだろう。
だがしかし、こんな一人カレー鍋も、なかなか乙なものである。
写真・文 吉野英昌
『酒一番』
福岡市博多区中洲4-4-9
092-291-3920
16:30~24:00(OS23:30)
基本無休(年末年始定休日あり)