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【福岡ラーメン物語 のぼせもん|79杯目
炉端屋台 正】

「ラーメンも屋台も福岡の観光資源。どちらも本気で向き合っています」

福岡で一番のラーメン屋になりたい。その一心でラーメンとひたすら向き合い続けてきた。十年が経ち店の前には長蛇の列が出来るようになった。次は福岡で一番の屋台を作る。新たな挑戦が始まった。

『豚骨ラーメン』(550円)/丁寧に下処理した豚頭骨だけを長時間炊き上げた豚骨スープに特定の低加水細ストレート麺。生粋のラーメン職人が本気で屋台のラーメンに取り組んだ一杯だ

 

 

炉端屋台 正 店主

店主 山田晶仁(Yamada Masahito)

1986年福岡県福岡市生まれ。18歳の時にラーメンの世界へ。2012年に兄弟で『博多一双』 を創業し一躍人気店に。2023年に『炉端屋台 正』を開業、日々屋台に立つ。

 

 

福岡の街を歩けば必ず目にする「屋台」。戦後の闇市から始まったとされる福岡の屋台は、ビーク時の1960年代には400軒以上あったが、近年は100軒を割るまでに減少していた。

全国で屋台がほぼ消滅しつつある中で、観光資源としての屋台の価値が再評価されてきた。そこで福岡市は全国唯一となる「屋台基本条例」を制定し「屋台の復活」を打ち出した。さらに屋台の出店を公募制にしたことによって、福岡の屋台の数は再び増え始めている。

『博多一双』を兄弟で創業以来、再び同じ厨房に立つ兄の晶仁さんと弟の章仁さん。兄弟ならではの息の合った連係プレーで、福岡の屋台文化に新たなムーブメントを起こしていく

天神南駅から渡辺通を南に歩くと、一際目を引くピカピカの屋台が現れる。アルミニウムで作られた真新しい屋台に使い捨てのブラカッブに注がれた酒。さらに価格は料理も酒も税別500円均一。2023年公募によって開業した『炉端屋台 正』は、これまでの屋台とは一線を画した「ネオ屋台」だ。

「汚い、高いというこれまでの屋台のイメージを払拭したいと思ったんです。清潔感があって価格も分かりやすい屋台なら、地元の方にも喜んで頂けると思いました」。

注文を受けてから炭火で香ばしく炙るバラ肉のチャーシューは炉端焼きならでは

店主の山田晶仁さんは人気ラーメン店『博多一双』を営むラーメン職人。18歳でラーメンの修業を開始し26歳の時に弟と共に独立開業を果たし、今では4店舗を構えるまでになった。長年にわたりラーメン一筋で走り続けてきた山田さんは、なぜ今「屋台」を始めるのだろうか。

「博多一双を創業して十年が経ち、これからの十年は”自分の可能性にチャレンジしていく十年”にしようと決めました。そこで注目したのが屋台。屋台は福岡の食文化としても観光資源としても注目されています。これまで博多ラーメンを通して福岡の魅力をお伝えしてきましたが、今回は屋台で福岡の食文化に貢献していこうと考えています」。

麺は人気製麺所『製麺屋慶史』にオーダーした特注麺

『炉端屋台 正』のコンセプトは、地元福岡の人が普段遣いが出来て、県外の人たちにも胸を張って勧めることが出来る屋台。地元の人も観光の人も誰もが行きたくなる屋台を目指して、「安心価格」「清潔感」を重視した新たな屋台のスタイルを構築した。

『鶏5点盛り』(550円)/福岡の銘柄鶏『華味鳥』を炭火で焼き上げた一番人気メニュー。自慢のつくねはパン粉をまぶして焼き上げ香ばしい食感を演出

料理は山田さんが大好きな「炉端焼」。福岡の銘柄鶏『華味鳥』をはじめ、野菜や魚介類、乾物などを炭火を使い目の前で焼き上げて提供する。酒類も生ビールやハイボールのほか、地元福岡の樽熟成させた麦焼酎『朝倉』などを揃えた。締めの豚骨ラーメンも手抜き一切無しの本物。長年ラーメン一筋で生きてきた山田さんの矜持だ。

「一双のラーメンは僕が普段食べたいラーメンを作っていますが、屋台のラーメンは僕が飲んだ後に食べたいラーメンを表現しています」。

豚骨スープは継ぎ足したり熟成させることなくフレッシュな骨の旨味と香りを重視。老若男女万人に好まれる味わいになっている

不定期営業ながらも屋台にはいつも山田さん自らが立ち、鶏を焼いてラーメンを作る。真新しい屋台はすっかり福岡の街に溶け込んでいる。

「屋台の魅力はお客様との距離が近いこと。お客様と一緒になって一つの空間を作っていくような楽しさがありますね。福岡の屋台文化がさらに盛り上がっていくように、これから頑張っていこうと思います」。

 

 

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●取材を終えて

地元の方にも観光の方にもお勧め出来る屋台

福岡の屋台といえば「不衛生」で「割高」。雰囲気重視で地元の人が行くよりも観光客が行くもの、という個人的なイメージがありました。しかし2013年に制定された「屋台基本条例」で公募が始まって以降、屋台の約4割が新規の公募屋台となり屋台の環境は著しく改善され、地元の人も行きやすい屋台が増えています。そんな中でこの『炉端屋台 正』は今までの私の屋台のイメージを完全に払拭した存在。ドリンクが使い捨てのカップというのも味気なく感じるかも知れませんが、衛生面を優先させているため。価格が500円均一というのも使いやすく分かりやすい。初めて地元の方にも観光の方にも胸を張ってお勧め出来る屋台ができました。

【ラーメン評論家 山路力也】
テレビ・雑誌・ウェブなど様々な媒体で情報発信するかたわら、ラーメン店のプロデュースなど、その活動は多岐にわたる。「福岡ラーメン通信」でも情報発信中

 

 

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掲載の内容は取材時のものです。取材日と記事公開日は異なる場合があり、メニューや価格、営業時間、定休日など取材時と異なる場合がありますので、事前に公式HPやお問い合わせにてご確認をお願いします。

炉端屋台 正

【所】福岡市中央区渡辺通4-6-2 パーキング303前
【☎】なし
【営】炭の火が起こり次第開始(18:30~19:00くらい)~売切次第終了(だいたい23:00)
【休】日曜、不定、荒天時
【席】10席
【P】なし
カード/不可
Instagram:@yatai0337

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