トップに
戻る

【福岡ラーメン物語 のぼせもん|82杯目
TonTon】

「博多とか長浜とかこだわりはありません。僕が美味しいと思ったラーメンを作ります。」

 

福岡の人間にとって豚骨ラーメンはソウルフード。だからこそ、大人から子供まで誰もが美味しいと感じるような豚骨ラーメンを作りたい。全福岡県民に食べて欲しい一杯がまたひとつ生まれた。

「ラーメン」(750円)/良質な豚のゲンコツと背骨、 豚皮などを丁寧に炊いたスープは濃厚でクリーミーな 口あたりながらしつこきはゼロ。 低温調理のチャーシューは柔らかな食感。万人に愛されるバ ランス重視の豚骨ラーメン。

 

TomTon店長

船津直希Funatsu Naoki

1987年長崎県諫早市生まれ。高校を中退し17歳の時にラーメンの世界へ。数々のラーメン店で経験を重ねて、2021年に「Ton Ton」の創業に参画し店長を務める


福岡市城南区荒江。街中の喧騒から離れた住宅街に一軒の店がある。出来てから数年しか経 っていないのに、何十年も前からこの町にあったかのように日常に溶け込んでいる店。「Ton Ton」はそんな地域密着型の人気店だ。

 

「荒江のこのあたりは学校はあるのですが会社がほとんどなくて、飲食店や夜飲める場所があまりないんです。お子さんからお年寄りまで、地元の人たちが普段使い出来るようなお店を作りたいなと思って、この場所で開くことを決めました」。

 

店長の船津さんは10代の頃からラーメン一筋。料理経験のまったくない状態で人気ラーメン店の厨房に飛び込み、ラーメン作りの楽しさと難しさに魅了された。
「店に入って半年経った頃にスー ブ作りを任されたんです。なかなか 自分が思うようなスープにならなくて苦労しましたが、自分が作ったラーメンを食べたお客様から「おいしかったよ」と言われた時の嬉しさ、達成感はたまらなかったですね。ラーメン屋ってとてもやりがいのある仕事だなと思いました」。

左/麺は人気製麺所 「製麺屋慶史」 に特注したものをメニューに応じて使い分けている。 右/チャーシューは低温調理で柔らかく仕上げて手切りする。

ラーメンを一生の仕事と決めた舩津さん。最初に入った店で十年以上にわたり腕を磨いたあと、勉強のためにいくつかのラーメン店で経験を重ねた。そして自分の理想のラーメンを出したいと、2021年 にこの店をオープンした。

 

良質な豚のゲンコツと背骨をベースに、豚皮や背脂などを加えて丁寧に炊いたスープは濃厚なのに臭みがなくてクリーミーな味わい。継ぎ足しながら作ることで旨味が深くなっていく。豚骨ラーメンは表現方法が実に多様で、店の数だけ味があると言っても良い。 「TonTon」のラーメンは、舩津さんがこれまで経験を積んできたラーメン店とも違う、オリジナルの豚骨ラーメンだ。

臭みのないクリーミーな豚骨スープは、 注文ごとに手鍋で温めることで熱々のラーメンになる

「豚骨ラーメンにも色々あると思うのですが、僕が目指したのは食べやすさ。豚骨本来の甘みとタレの甘みをバランス良く生かして、しっかりと濃厚でありながら臭みはないスープを作りたかったんです。お子さんから年配の方まで、幅広い人たちが食べやすい味を目指しました」。

「自分のラーメンに点数をつけるなら90点でしょうか。 豚骨ラーメンは スープを維持するのが難しいんです。 味だけではなくスープの色や香りも常にチェックして、ベストの状態でお出し出来るように頑張っています」

飲食店に逆風が吹くコロナ禍の真っ只中でのオープンだったが、美味しいラーメンを欲していた地元の人たちの支持を集めて『Ton Ton』は一躍人気店となった。この店でしかラー メンは食べないという小さな子どもから、週に何度も通ってくる年配客まで、船津さんが生み出したラーメンは、まさに老若男女に愛されるラーメンとなったのだ。

「旨辛TON担麺」(900円)/自慢の豚骨スープに胡麻ダレを加えてピリ辛に仕上げたオリジ ナルの担々麺。
「ニンニクチャーハン (半)」 (450円)/ニンニクの香ばしさにマヨネーズがマッチするジャンクな味わいのチャーハン

福岡の人間にとって豚骨ラーメンは、幼い頃から食べ慣れ親しんだソウルフードだ。しかし昨今の福岡では豚骨以外のラーメン店が増えている。「脱豚骨」の潮流が加速していく中、敢えて豚骨ラーメンにチャレンジする職人としての矜持。舩津さんは今日も厨房に立ち豚骨と向き合っている。

 

「豚骨ラーメンしか作ってきませんでしたし、僕自身豚骨ラーメンが好きなんです。この場所で僕が好きな豚骨ラーメンを作り続けていきたい。そしていつか仲間を増やしてお店も出していきたいですね」。

 

■取材を終えて

丁寧な仕事が感じられる豚骨ラーメンの佳作

ここ数年福岡では豚骨ラーメン店よりも非豚骨ラーメン店の開業が多くなってい ます。 長年愛されている老舗や人気行列店が多い豚骨ラーメンというジャンルの中 で、個性や存在感を示すのはなかなか大変なこと。しかし敢えてその難しい豚骨 ラーメンで勝負を挑んでいるラーメン店を、 個人的には応援したくなります。 今回 ご紹介する「TonTon』 もそんなお店の一つ。 はじめて食べた時にとても丁寧に作ら れている良質な豚骨ラーメンだと感じ、 間違いなく福岡の人にスッと馴染む味だな と思いました。豚骨ラーメンは戦後間もない頃から続く福岡のソウルフード。 その 歴史を紡ぐ新たな担い手がこうしてまた福岡に登場したのは嬉しい限りです。

ラーメン評論家

山路力也 Rikiya Yamaji

テレビ・雑誌・ウェブなど様々な 媒体で情報発信するかたわら、 ラーメン店のプロデュースなど、 その活動は多岐にわたる。「福岡ラーメン通信」でも情報発信中

 


掲載の内容は取材時のものです。取材日と記事公開日は異なる場合があり、メニューや価格、営業時間、定休日など取材時と異なる場合がありますので、事前に公式HPやお問い合わせにてご確認をお願いします。

 

Ton Ton

【所】福岡市城南区荒江1-35-21
【☎】092-204-7393
【営】11:00-14:00/17:30-3:00
【休】火曜
【席】14席
【P】なし カード/不可

SNS運用代行サービス