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サウナ備忘録 Vol.2 富合サウナランド

前回紹介した『田迎サウナ』もそうだが、熊本市には郊外型のサウナ施設がもうひとつ存続している。
それが富合にある『富合サウナランド』だ。

地方ではこの『サウナ施設』自体が貴重だ。昭和の時代、外で風呂に入るといえば『銭湯』に入るということが当然だったころ。
いわゆる庶民的な銭湯でも大型の健康ランドでもない、働く男たちの社交場としての『サウナ施設』が隆盛を極めたサウナブームが起きた。

その頃に多くの『サウナ施設』が地方にも乱立したが、銭湯と健康ランドの中間に位置する「いいとこ取り」の『スーパー銭湯』という形態が増え始めたころ続々とその姿は消えていった。
都心部では格安で宿泊できるカプセルホテル型の形態としてサウナ施設は姿を残しているが、宿泊需要の少ない地方ではサウナ愛好家たちは主に「銭湯」「スーパー銭湯」「健康ランド」「温泉施設」に併設されているサウナ室と水風呂を楽しむことが多いのが現状だろう。

そんな中、熊本市では当時の姿を残す『サウナ施設』が現存していることは、熊本の地がサウナと相性がいいということを物語っている。

さて、前置きが長くなったが『富合サウナランド』もそんな貴重な地方に残るサウナ施設のひとつ。その歴史は35年になる。
実はこの施設、福岡でもおなじみの古着屋『五番街』創業者とその母親のサウナ好きが高じて作られた施設だ。

そのせいもあってか当時のサウナ施設には珍しく男性専用ではなくしっかりと男女ともに楽しめる施設となっている。
通常スーパー銭湯などのサウナ室や水風呂のセッティングは男性側はより熱く、より冷たい設定になっていることも多いが、富合サウナは男女平等なセッティングを保っている。

2010年ごろから起きている第2次サウナブームでは、サウナと水風呂で交互浴をするという日本で発展してきたカルチャーを下敷きにしながら、サウナの本場・フィンランドサウナやエンターテイメント型のドイツサウナへのリスペクト(中温中湿の室内でサウナストーブに水をかけ湿度を高めて体感温度を高めるロウリュやアウフグース)を多く含んだものに推移してきている。
さらに近年ではロシア式サウナ『バーニャ』で発展しているウィスキング(白樺やユーカリなどの枝葉を束ねたもので施術者がサウナ室内でマッサージをしてくれる行為)も持ち込まれつつある。

そのような最新のサウナカルチャーと対極にあるのが、いわゆる「昭和ストロング系」と呼ばれる従来のサウナ施設に多いカラカラの低湿度、かつ高温のサウナだ。富合サウナはまさにそんな昭和ストロング系サウナを体現したようなサウナだ。
高温低湿な室内のなかにはテレビもなく、ひたすら昭和歌謡や演歌が流れている。
そんなサウナで汗を流したら、天然地下水を汲み上げた水風呂に入り、その行為を繰り返す。


創業当時の姿をそのまま残すサウナに入り、演歌を聴きながら過ごしていると、なぜかサウナにいながら「日本の心」を思い出すのだ。
サウナハットやヴィヒタ、そんな異国のサウナグッズなんて似合わない。手ぬぐいを頭に巻き締めて「熱っちいなチクショーめ」とか言いながら入りたくなる。
何となくだが。

そんな昔ながらの姿をそのまま残す富合サウナランドは熊本の大事な財産なのだ。

オーセンティックなフィンランドサウナや、気持ちよく汗をかけるドイツ式のアウフグースは日本にとっては目新しいコンテンツだろう。
しかしそれを気軽に体験できるサウナは、まだまだ日本には少ない。
日常に根ざすサウナはまだまだ「昭和ストロング」設定なサウナが多いのが地方の現状だ。

今後様々なスーパー銭湯や健康ランドが流行を取り入れたサウナを増やしていくかもしれないし、そうはならないかもしれない。
それは今後のサウナカルチャーの盛り上がり方次第だろう。
私だって中温中湿の気持ちいい温度でセルフロウリュできる施設や、アウフグースに力入れしてくれるような施設が地方に増えていけば嬉しいし、全国の水風呂がキンキンに冷えてくれればいいのにと思っているし、少なくともそんな施設が増えればいいと思って情報を発信している。

しかしながら、その裏で今なお残る歴史ある正統派昭和ストロングサウナが選択肢のひとつとして残りつづけてほしいとも思うのは欲張りだろうか?


<施設情報>

施設名/富合サウナランド
住所/熊本市南区富合町田尻45-1
番号/096-358-3728
時間/24時間営業
休日/なし
駐車/あり
料金/600円
子ども300円(小学生以下)
24:00~6:00は別途深夜料金1000円
個室使用 2500円
男女ともにサウナあり

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