【フクオカ・メイド Vol.14】手すき和紙工房/筑前秋月和紙処
【連載企画】フクオカ・メイド vol.14
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福岡市内から車で一時間。歴史の風情が漂う「筑前の小京都」秋月で、紙が生まれる瞬間を見ました。見せてくれたのは、明治9(1876)年に創業した『筑前秋月和紙処』の4代目・井上賢治さんです。
「手すきして水分を絞った和紙は、一枚一枚鉄板に貼り付けて乾かす。乾いた時が、紙が生まれる瞬間たいね」。出来立ての和紙は温かく、凹凸のある手触りが心地良く感じました。
秋月藩の奨励産業として江戸時代に興り、現在まで続く秋月和紙の歴史。かつては20軒あまりの製紙工場が軒を連ねていたと言われていますが、現存するのは『筑前秋月和紙処』のみ。井上さん自身も、一度は家業と別の道を志して地元を離れたそうですが、離れたことで初めて気づいた秋月や和紙の魅力、そして何より、3代目である父親の存在に心を動かされたのだそう。
「親父は歳を取って、視力がほとんどなくなってからも和紙作りを続けていてね。見えないのに、どうしてだかお客さんが望む通りの紙ができる。見えると考えてしまうけど、見えない分、身に染みついた感覚が働くんだね」。ものづくりは生き様やけん、と井上さん。「目が見える、見えんっていうのは、言い訳にならんとよね」。
一般的な西洋紙と比べ、軽くて強い手すき和紙。特に秋月和紙はその昔、ちょんまげを結う元結として重宝されていたほどに引きが強く、しなやかなのが特徴です。工房併設の店には唯一無二の紙を求めて書道家やアート作家が足繁く通うほか、海外、特にヨーロッパからのお客さんも多いそう。
「海外の方にもっと和紙の魅力を伝えたいけど、翻訳機越しだとなかなか難しい」と歯がゆい顔を見せる一方で、常連客には「3代目の作る和紙に近づいてきたと言われた」とうれしそうな井上さん。秋月の特産品「川茸」を使った和紙を考案したり、秋月ゆかりの名士たちをモチーフにした『おきあがり小法師』を制作したり。生まれ育った秋月と和紙への愛が籠ったものづくりに、彼の生き様を見ます。
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筑前秋月和紙処
所 朝倉市秋月424-2
☏ 10946-25-0517(工房見学、手すき体験は要予約)
営 11:00~17:00
休 火曜、不定
P あり(5台)
カード/不可、Paypay可
HP https://www.akizuki.co.jp/ja/see-and-do/shopping/washi-shop