【福岡ラーメン物語 のぼせもん。】博多区榎田『いちむじん』
「ご縁と絆をいただいた福岡でラーメンを作り続けます。」
地下鉄東比恵駅から歩いて10分。福岡空港の西にある榎田に新しく出来たラーメン店。濃厚ながらも臭みのないクリーミーな豚骨スープに、しなやかな食感の自家製麺。新店とは思えない完成度の高い一杯を作っているのは、30歳の若きラーメン職人、和田一平さん。老舗や人気ラーメン店で経験を積み、最後にこの場所にあった人気ラーメン店で働いていたが、その店が移転することに伴い、店舗を譲り受けて開業した。生粋の福岡人かと思いきや、生まれも育ちも四国高知。土佐っ子の和田さんはなぜ福岡でラーメン店を開いたのだろうか。
「高校卒業後は地元で就職したんです。しかし愛媛で初めて豚骨ラーメンを食べてはまってしまって、本場の豚骨ラーメンを知りたくて福岡へ越してきました」24歳の時に意を決して福岡へ。働きながら豚骨ラーメンを食べ歩く中で、いつしかラーメン屋をやりたいという思いが芽生えてきた。その中で昔ながらのラーメンで人気の老舗『福芳亭』のラーメンに感動し、ラーメン修業が始まった。飲食経験がまったくなかった和田さん。当然洗い物からスタートした修業の日々。先輩たちから飲食のイロハを教えてもらい、スープも作らせてもらえるようにもなった。もっと勉強したいと思った和田さんは、自分が大好きだった人気店『ラーメン海鳴』『らぁめんシフク』でさらに修業を重ねた。
「オリジナリティがありオンリーワンの存在である海鳴さんでは、現場はもちろん工房や新店のオープニングなど、たくさんの経験をさせて頂きました。非豚骨も学びたいと思って修業したシフクさんでは、個人店ならではの大変さや大将のラーメン一杯にかける想いを学ばせて頂きました」自分の好きな味、好きなラーメン店で修業を重ねた和田さん。自らが作るラーメンはこれまでの経験を生かしたものにしようと決めていた。しかし、経験豊富だからこそ迷いも出て試行錯誤が続いた。そんな時に大きかったのが結婚を予定している彼女の存在だった。「自分の大切な人に美味しいと言って貰えるラーメンを作りたいと思ったんです。そこで試作につきあってもらって、彼女が満足する一杯で勝負しようと決めました」
クリーミーで重層的な旨味を蓄えたスープに醤油ダレ、自家製麺を合わせたラーメン。懐かしさと新しさが共存する、他にはないオリジナルの豚骨ラーメンが生まれた瞬間だ。生まれ育った高知から離れた福岡で出逢った、多くの人たちとの大切な絆からこの店は生まれた。店名の「いちむじん」とは脇目もふらず一生懸命取り組むという言葉「一無尽」から名付けた。
「僕は本当に凄い人たちにラーメンを教わることが出来ましたが、まだまだ実力が足りません。一生懸命ラーメンと向き合い続けて、いつしか師匠たちに負けないと胸を張って言えるような一杯を作って恩返しがしたいと思っています」
*本記事は
「シティ情報ふくおか2020年4月号」より抜粋して掲載しています。
https://www.fukuoka-navi.jp/54285
『いちむじん』
住所:福岡市博多区榎田2-3-1
電話:092-436-2350
営業時間:11:00~22:00
定休日:日曜