【インタビュー】「悩みがない人はいないし、僕も常に悩んでいる」。映画『リスタートはただいまのあとで』主演・古川雄輝さんを直撃!
壁に直面してもがいたり、鬱屈とした気分で気力が湧かなかったり、なにか物事が上手く進まなかったり…。人生は時としてそんな苦難が立ちはだかります。今、コロナ禍の中でそういった気持ちを抱えて過ごしている人も多いはず。
映画『リスタートはただいまのあとで』はBL(ボーイズ・ラブ)コミックを原作としており、そういった側面がクローズアップされがちですが、ロケ地の長野を舞台に丁寧に描かれているのは人間の再生と成長。竜星涼さんと共にW主演を担った古川雄輝さんにお話を聞きました。
■悩みがない人はいないし、僕も常に悩んでいる。
直面している壁にどう立ち向かうか、
考えるきっかけになる作品です
――俳優として挑戦的な意味合いもあった作品だったと思います。オファーを受けた際のお気持ちは?
最初にBL作品だと聞いていましたが、脚本を読んでみるとBL要素よりも愛情や親との確執が中心に描かれています。主人公は元々同性愛者ではありませんし。いろんなテーマが含まれている作品ですが、今回‟純愛BL”と言っていまして、自分が抱いていたBLの印象とは違って癒しの側面もある映画だと思います。原作が作品として凄く面白かったので、撮影に入るのはとても楽しみでした。
――たしかに作品としてBLが前面に押されがちですが、作品の根底にあるものは人間愛の部分ですよね。古川さん演じる光臣と竜星さん演じる大和の関係性が描かれていますが、大和は優しくて快活で、光臣はどこかドライで対照的な2人です。仕事や親との関係性に悩む光臣の目線で作品を観る方が多そうですね。
そうですね、光臣は共感しやすいキャラクターだと思います。ほとんどの人は挫折する瞬間がありますし、親と上手くいかないこともたくさんありますし。あと、光臣の「人のせいにしていた」といったセリフがあるんですけど、自分のせいだとすぐに認められる人ってなかなかいないですよね。自己防衛で「自分のせいじゃない!」って怒っちゃったりすると思うんですけど、光臣はそういったところを大和のおかげで認められるようになる。共感できるキャラクターなので、どうやって光臣がそういったところを乗り越えていくようになるのかは、役作りを凄くしないといけないと思っていました。その過程について監督とかなり相談しましたね。
――農園で農作業をするシーンで、最初は雑に苺を扱っていた光臣がやがて優しく摘むようになって、そこを褒められて嬉しくなったり、全編を通して光臣の成長物語でもあるんですよね。
僕にとってはそこが最大のポイントでした。なによりもそこは丁寧に演じないといけないと思い、時間をかけて監督に相談していった点です。
――光臣は東京での仕事が上手くいかず地元に戻って、人との出会いをきっかけにして農作業や家業と出合って人生のリスタートを切っていきます。人生の中で停滞してしまったり、落ち込んだ気持ちになることは誰でもあると思いますが、これまでを振り返って古川さんがそういった思いを抱えたこともありますか?
もう、常にですね。悩みがない人はいないですから。なので、対策は考えていて。目標を高く設定しすぎたりすることがあるので、手に届く目標を設定しておくと、それに届いた時の達成感と幸せがあると思っています。
――光臣にとっては大和との出会いが人生の中で大きなものになりましたが、古川さんにとってこれまでで印象的な出会いはありますか?
佐々木蔵之介さんに「遠慮しちゃダメだよ」と言われたことがあって。僕がデビュー1年目ぐらいの時にドラマでご一緒して、当時僕はなにもわからない状態でエキストラさんが多い中を駆け抜けるシーンがあって、僕はぶつからないように遠慮がちだったんですけど、その時に「遠慮しちゃダメだよ」と。遠慮しているつもりはなかったんですけど、気を遣ってしまっていて。そういうのって芝居の場ではダメで。みんな勝負しに来ていて、100%を出している中で…厳しいことを言うと人を蹴落とすぐらいの勢いでやらないといけないんですよね。そんな時に委縮している自分がいたから、その言葉が凄く響いて。蔵之介さんはサラッと言われただけだと思うんですけど、それ以降はたとえば大御所の方とご一緒する際にひるみそうになったら、「芝居の場ではひるんだらダメだ」と、そういう考え方をするようになりました。
――今回共演された竜星さんは役柄として光臣とは正反対ですが、それでは竜星さんから受けた影響や刺激などは?
彼は演じている大和と一緒で、凄いと思うのは積極性と行動力ですね。行動力があるほど人生って楽しくなると思うんですけど、僕は基本的に行動力が全くないので、行動力がある人には凄く惹かれますし、羨ましいです。
――最後に、作品の持つメッセージ性について聞かせてください。
基本的には成長物語がベースにあり、そこでの葛藤は誰しもにリンクしていると思っています。光臣が成長していく姿を観て、「私も明日から頑張ろう」と元気を受け取ってもらえたらいいなと。特に今は状況が状況ですし、映画館でも満員で映画を観られない状況ですから、この作品を観て元気になっていただけたらといいなと思っています。自分が直面している壁にどう立ち向かうか、考える機会になる作品だと思います。
●古川雄輝
’87年生まれ。東京都出身。’11年、映画『高校デビュー』でスクリーンデビュー。’13年に放送された主演ドラマ『イタズラなKiss~Love in TOKYO~』が日中を中心にアジア圏で配信され大ヒットを記録。その後、ドラマでは『5→9~私に恋したお坊さん~』(’15)、『連続テレビ小説 べっぴんさん』(’17)、『ラブリラン』(’18)、映画では『曇天に笑う』(’18)、『となりの怪物くん』(’18)、『屍人荘の殺人』(’19)などに出演し、国内外から高い評価を得ている。
■映画『リスタートはただいまのあとで』 / UCキャナルシティ13ほか上映中
©2020映画「リスタートはただいまのあとで」製作委員会
スタイリング:五十嵐 堂寿
ヘアメイク:赤塚修二(メーキャップルーム)