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【インタビュー】チャン・リュル監督。映画「福岡」の制作を決めた理由。

取材・文・撮影/本田珠里(編集部)

中国と韓国で教鞭をとりながら、現代中国文学を代表する作家として、また様々な国際映画際でも高い人気を誇る映画監督として活躍するチャン・リュル監督が、福岡の街を舞台に映画を撮影するという。タイトルもなんと『福岡』。撮影の合間に貴重なインタビューの時間を頂いた。

—今回、福岡を舞台に映画を撮られると聞いて、一ファンとして驚きでもあり大変嬉しく思っています。監督のこれまでの作品は『豆満江』『重慶』『慶州』など、今回の『福岡』のように地方の名前がタイトルになったものが多いですが、何か意図はあるのでしょうか?

今振り返ってみると、地名の作品が多いのは意図してというより、私自身が空間をきっかけとして映画を作るんです。監督によって、それがストーリーだったり、人物からだったりしますが、私の場合は“空間”が大事なんですよ。福岡を行き来し始めて10年を超えましたが、ふと恋しくなったり、誰かに会いたくなったり…もっと福岡を知りたいと思ったのが、この映画をつくるきっかけとなりました。また地名も、幸福の福に、岡(丘)という響きがとても美しいと思い、今回も地名をそのままタイトルにしました。

 

—福岡という場所は韓国の人々にとって、東京や大阪に比べ位置まで把握してる人は少ないと思うのですが…。

そこに関しては全く心配していません。東京と福岡を比べた時、個人的な考えではありますが福岡の人たちは本当に暖かいと感じます。東京が悪いというわけではないんですよ。でも、その人の温もりをどう感じられるかというのが大事で、やはり空間が関係してくるんです。福岡という空間が、人々の暖かさを感じさせてくれるそのものじゃないかと思うんですよ。東京を福岡のように優しいなと感じるには東京の空間をもっと分析しなきゃいけないです(笑)。福岡を舞台にすれば、東京やソウルの人たちがもっと見てくれるんじゃないかなとも思います。

 

ー福岡でよく行かれる場所などはあるんですか?

私は、どの国に行っても“ここには絶対訪ねる”という所はなく全体の雰囲気を見ます。福岡はどこに行っても居心地がいいし、お酒を飲めばもっと気分が良くなります(笑)。今回の映画では、古本屋や居酒屋、その周辺の路地などが舞台になりますが、古い書店の香りが路地へ醸し出されるんじゃないかと感じるくらい、その雰囲気そのものが何かを引き出してるんじゃないかと思いますし、居酒屋もそこでお酒を飲むと美味しく感じます。そう感じられる空間が好きです。

 

—今までの作品の多くは、普通の生活の中で起こるファンタジーで、誰が現実で、誰が夢を観ていたのか錯覚に惑わされます。今回はジャンルがロマンスとなっていますが、今までとは少し違った作りになるのでしょうか?

僕の体の中にはロマンスが充満しているんですよ(笑)。そんな風には見えないですけれども(笑)。福岡という空間は、ロマンスに合う雰囲気があるなと感じます。僕が20代のころに福岡に来ていたら恋愛していたんじゃないかなと思いますね。福岡にはそういう不思議さ、独特な雰囲気があるんです。だからここで撮ったら全作品とはまた少し違う面は必ず出てくると思います。ただ空間は変わっても、私という人間自身はそんなに変わらないものなので(笑)、前作と共通する雰囲気はあると思います。ロマンスの部分は、今回のパク・ソダムという若く美しく女優が出演しますから、彼女がうまく表現してくれればより美しい映画になるのではないかと期待しています。

 

心から「福岡」という都市を気に入ってくれているのが伝わる口調で、丁寧に説明をしてくれたチャン・リュル監督。

福岡ではおなじみの場所、紺屋町商店街での撮影現場にお邪魔してみると、台本がほとんどないという噂通り、その場で動線を決めながら演技指導中。

主演はクォン・ヘヒョ(『冬のソナタ』)、パク・ソダム(『ビューティーマインド』)、ユン・ジェムン(『アイリス』)と、演技派と呼び名の高い3人(※カッコ内は日本でも人気の高い出演作品)。少しの打ち合わせで息の合った様子で進む撮影現場。チャン・リュル監督の美しいフィルターを通してみる福岡の街、映画『福岡』の公開が今から楽しみだ。

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